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猫パロ自宅訪問編の6話目です。完結しました。
最後までお付き合い頂いてありがとうございます!
前話はこちら→ お邪魔してきました(1) (2) (3) (4) (5)
お邪魔してきました (6)(終)
「あーあ。僕も早く可愛いお嫁さんが欲しいなあ」
「……土方さんと雪村は、まだ結婚していない」
「同じようなものじゃない」
「というか、もう千鶴ちゃんは新妻同然だけどね」と冗談めかして言った総司が夜空をあおぐ。
その言葉に軽く同意して、病院への道を歩いた。
今日は夜勤だ。
今頃、左之が遅いと愚痴をこぼしながら、仮眠室で不貞寝しているかもしれない。
悪いことをした。途中で酒でも買って行くか。
自分は仕事なので付き合うことはできないが。
「おまえはそちらの方向ではないのか?」
「そうだけど、左之さん来てるんでしょ? 久しぶりにちょっと話して行こうかなって」
「そうか」
駅へ続く曲がり角を通り過ぎる。
ポケットに手を突っ込んだままの総司がコンビニへ入って行った。
迷わず酒類のコーナーへ進んだあたり、考えていることは同じらしい。
「雪村に、今日のおかずを少しもらってきた。左之のつまみに良いかと思う」
「……さすが一君は抜け目ないよね」
ビールと日本酒を適当にカゴへ突っ込んだ総司がつまみを物色していたので、雪村に包んでもらった紙袋を掲げる。
酒のあてとして作られた料理ではないが、美味しいので大丈夫だろう。
じゃあ珍味はいらないかな、と言ってスナック菓子を適当に選んだ総司が会計に向かう。
ついでにホットスナックも数点追加して、半分の金額を出した。
コンビニから出ると、鋭い北風が襲って来て思わず体を縮めた。
ついさっきまで、あたたかい部屋で美味い料理を食べていたのだ。余計身に堪える。
夜空に浮かぶ月と星が、流れる雲で見え隠れしていた。
「……寒い」
「そうだな」
「こんなに寒くて仕事がきつくても、千鶴ちゃんがご飯作って待ってるなら、意地でも頑張って家に帰るよね」
「分かっているなら、土方さんの邪魔をするのはやめたらどうだ」
「それとこれとは話が違うんですー」
「……おまえの考えることは分からん」
土方さんが、毎日早く帰宅したがっているのは分かっている。
黒猫の初診のときから雪村を気に入っていたのは分かっていたし、ちづを拾ってからは表情も和らぐことが多くなった。
雪村との同居をはっきりと確信したのは今日だったが、最近持参するようになっていた弁当や水筒で察していたので驚きはしない。
今日の様子ではうまくやっているようだし、土方さんが身を固めるのも時間の問題だろう。
私生活も充実して、増々仕事熱心になるに違いない。部下として、これ以上嬉しいことはない。
しかし、これからはちづに会いに行くのを遠慮しなくてはいけないのか。
それだけは少し――いや、心から残念である。
「……一君も、引き取るよね?」
「は?」
引き取る?
唐突に質問を投げてきた総司の横顔は嬉しそうに笑っていて、いつも他人をからかうときの顔と違って見えた。
「ちづと、気に入らないけどあの黒猫との間に、もし子猫が産まれたら」
「……そう、だな」
気が早いと言いかけて止めた。
早いもので、土方さんと雪村が子猫たちを拾ってから、それだけの日数が経過している。
「土方さんも獣医の端くれだし、そろそろ考えてるよね」
「後半だけは肯定しておく」
ちづもとしぞーも、可愛らしくて美しい猫だ。
そんな二匹の間に産まれた子猫はどんなに可愛いだろうか。
ちづが長毛なので、としぞーのように艶々とした漆黒で、長毛の子猫もあり得るかもしれない。
「……一君、どこ行くつもり」
そんなことばかりを悶々と考えて、何度も道を間違えては総司に呼び止められた。
<終>
最後までお付き合い頂いてありがとうございます!
前話はこちら→ お邪魔してきました(1) (2) (3) (4) (5)
お邪魔してきました (6)(終)
「あーあ。僕も早く可愛いお嫁さんが欲しいなあ」
「……土方さんと雪村は、まだ結婚していない」
「同じようなものじゃない」
「というか、もう千鶴ちゃんは新妻同然だけどね」と冗談めかして言った総司が夜空をあおぐ。
その言葉に軽く同意して、病院への道を歩いた。
今日は夜勤だ。
今頃、左之が遅いと愚痴をこぼしながら、仮眠室で不貞寝しているかもしれない。
悪いことをした。途中で酒でも買って行くか。
自分は仕事なので付き合うことはできないが。
「おまえはそちらの方向ではないのか?」
「そうだけど、左之さん来てるんでしょ? 久しぶりにちょっと話して行こうかなって」
「そうか」
駅へ続く曲がり角を通り過ぎる。
ポケットに手を突っ込んだままの総司がコンビニへ入って行った。
迷わず酒類のコーナーへ進んだあたり、考えていることは同じらしい。
「雪村に、今日のおかずを少しもらってきた。左之のつまみに良いかと思う」
「……さすが一君は抜け目ないよね」
ビールと日本酒を適当にカゴへ突っ込んだ総司がつまみを物色していたので、雪村に包んでもらった紙袋を掲げる。
酒のあてとして作られた料理ではないが、美味しいので大丈夫だろう。
じゃあ珍味はいらないかな、と言ってスナック菓子を適当に選んだ総司が会計に向かう。
ついでにホットスナックも数点追加して、半分の金額を出した。
コンビニから出ると、鋭い北風が襲って来て思わず体を縮めた。
ついさっきまで、あたたかい部屋で美味い料理を食べていたのだ。余計身に堪える。
夜空に浮かぶ月と星が、流れる雲で見え隠れしていた。
「……寒い」
「そうだな」
「こんなに寒くて仕事がきつくても、千鶴ちゃんがご飯作って待ってるなら、意地でも頑張って家に帰るよね」
「分かっているなら、土方さんの邪魔をするのはやめたらどうだ」
「それとこれとは話が違うんですー」
「……おまえの考えることは分からん」
土方さんが、毎日早く帰宅したがっているのは分かっている。
黒猫の初診のときから雪村を気に入っていたのは分かっていたし、ちづを拾ってからは表情も和らぐことが多くなった。
雪村との同居をはっきりと確信したのは今日だったが、最近持参するようになっていた弁当や水筒で察していたので驚きはしない。
今日の様子ではうまくやっているようだし、土方さんが身を固めるのも時間の問題だろう。
私生活も充実して、増々仕事熱心になるに違いない。部下として、これ以上嬉しいことはない。
しかし、これからはちづに会いに行くのを遠慮しなくてはいけないのか。
それだけは少し――いや、心から残念である。
「……一君も、引き取るよね?」
「は?」
引き取る?
唐突に質問を投げてきた総司の横顔は嬉しそうに笑っていて、いつも他人をからかうときの顔と違って見えた。
「ちづと、気に入らないけどあの黒猫との間に、もし子猫が産まれたら」
「……そう、だな」
気が早いと言いかけて止めた。
早いもので、土方さんと雪村が子猫たちを拾ってから、それだけの日数が経過している。
「土方さんも獣医の端くれだし、そろそろ考えてるよね」
「後半だけは肯定しておく」
ちづもとしぞーも、可愛らしくて美しい猫だ。
そんな二匹の間に産まれた子猫はどんなに可愛いだろうか。
ちづが長毛なので、としぞーのように艶々とした漆黒で、長毛の子猫もあり得るかもしれない。
「……一君、どこ行くつもり」
そんなことばかりを悶々と考えて、何度も道を間違えては総司に呼び止められた。
<終>
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