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猫パロ自宅訪問編の3話目です。
前話はこちら→ お邪魔してきました(1) (2)


拍手[11回]









お邪魔してきました (3)





「うーん……おかずの種類、増やそうかなあ……」

キッチンに立つ自分の隣には、思案顔の千鶴。可愛らしいピンクのエプロンを身に着けて、料理本とにらめっこしている。
にぎやかな食卓が嬉しいのか、秘かにわくわくしているのを隠しきれていない。
その奥にいる斎藤は、黙々と料理に勤しんでいた。

結局、面白半分で事情を聞き出した原田は、意気揚々と留守番をかって出た。否、躊躇する土方を無理やり説得した。
条件は、近いうち原田に千鶴と子猫二匹を会わせること。
おそらく新八や平助もついて来るだろう。またにぎやかになりそうだ。

「つい手伝いを申し出てしまいましたが、俺も夕食にお邪魔して良かったのでしょうか」
「気い使うな。気が乗れば久しぶりに、子猫たちとも遊んでやってくれ」
「ありがとうございます。二匹とも元気そうですね」

心配だからといって、なぜか斎藤までついて来た。
結果としては、先ほど総司との言い争いで助けられてしまったが、斎藤としては子猫二匹に会いたかったのもあるだろう。
言葉通り、カウンター越しに見えるちづは、元気いっぱいで総司にじゃれついている。
今にも総司に襲い掛かりそうな黒猫については見なかったことにした。

「雪村。料理中悪いが、味噌汁の濃さはこれで良いだろうか」
「ん……とても美味しいです斎藤さん! ありがとうございます!」

斎藤が差し出した味見用の小皿を千鶴が受け取っている。
手伝ってくれるのは有難いが、距離が近すぎるのではないか。
土方ですら、仕事の忙しさから最近まともに会話も交わせていないというのに。
しかし声をかけようにも、見ていないようでこちらを面白そうに観察している総司がいるので、眉間の皺は寄るばかりである。
いつもは千鶴の気配がうかがえて便利なカウンターキッチンも、この時ばかりは不便だ。

「土方先生、斎藤さん、もうリビングでお休みになって頂いて大丈夫ですよ?」

悶々としながら手伝っているうちに、やれそうなことがなくなった。
斎藤も引き下がったので、大人しくキッチンを後にする。

「……よし。あと少し!」

残された千鶴が、気合いいっぱいに腕まくりをしているのを横目で確認した。
今まさに想定外の事態だが、千鶴は客人をもてなすことが思いのほか好きらしい。
たまには客を招くことも考えよう。ただし、総司以外で。

「あ、お帰りなさい。一君はこっちね」
「ふに゛ゃああー!!」

リビングに入るなり、いつの間にか総司に捕まっていた黒猫が斎藤に差し出される。
全身の毛を逆立てて総司を威嚇する姿に、流石に同情を禁じ得ない。

「総司、いじめるんじゃない」
「いじめてないよ。そいつから飛びかかって来たんだし、ほんと誰かさんそっくりで可愛くないよね」

斎藤が黒猫を受け取ると、疲れ切ったのかぐったりと大人しくなった。鳴き声のひとつもあげない。可哀想に。
あきれた顔でカーペットに座った斎藤の膝に、ちづが乗ろうと飛びついてくる。
短い手足でうまく登れずによたよたとするので、抱き上げて乗せてやった。

「ちづ、久しぶりだな」
「みー」

なでた斎藤の手を小さな舌でぺろりと舐める。
ちづを拾ったばかりのときは、非番の斎藤に預けることも多かった。
それをちゃんと覚えているらしく、ふさふさの尻尾はごきげんに揺れている。

「あ、一君ずるい」
「おまえは散々遊んだだろう」
「前はちづを預かったりしてたじゃない。今日くらい僕に譲ってよ」
「断る」

頭上で大人気なくもめる二人を尻目に、ちづは隣に降ろされた黒猫の体を舐めはじめる。
おそらく総司が乱入の瞬間から緊張続きだった黒猫は、気持ちよさそうに目を閉じた。
すぐに、ちづも一緒になって寝てしまう。斎藤の体温が心地よいのだろう。

「おい、騒ぐんじゃねえよ」
「うっ……すいません」
「なんだ、ちづも寝ちゃったの?」

凝りもせずちづをつつこうとする総司を斎藤が制し、やっと一息つくことができた。
身体をソファにまかせると、キッチンから軽快な包丁の音が聞こえてくる。

「……土方さんのところも、最近忙しいって聞いてますけど。ちゃんと帰って来れてるんですか?」

同じソファに、人ひとり分空けて寛ぐ総司が問う。
目線は眠るちづに向いたままだ。

「できる限り早く帰って来れるようにしてる」
「その感じだと、まだ同棲は楽しめてないって感じですね」
「おい、総司」
「今は普通の話をしてるだけじゃない。一君は土方さんを心配しすぎ」
「まさに久しぶりに早く帰れるってときに、邪魔してきたのはどこのどいつだ」

今日のために多少の無理をした。今だって放っておかれたら、すぐに居眠りする自信がある。
斎藤はそれを知っているので心配しているのだろう。

「それは悪いタイミングで来ちゃいましたね。ちづとは遊べたし、千鶴ちゃんの手料理を食べたら大人しく帰りますよ」

――と言いつつ、にこにこ顔の総司。
千鶴にたいして手を出せていないことなど、分かりきっているといった顔だ。
それを追及してこないのは、土方の疲労を思ってのことかは分からない。
大人しく飯を食って帰ってくれよと念じながら、ひどく重い瞼が閉じていった。



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