乙女ゲーム中心の二次創作サイト/小説ONLY
ようこそ♪
最新記事
作品リスト
カテゴリー
メールフォーム
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)
次回で最終回です。
2人と2匹になるまで (6)
「そんな緊張してないで、早く入れよ」
「お邪魔しますっ……!」
玄関に入るなり遠慮するなと言い残し、すたすたと歩いて行く先生の背中をぼんやりと眺める。
今、自分が先生の家に居るなんて嘘みたいだ。
「……にゃ」
「あっ……!疲れたよね?すぐ休ませてあげるからね」
不満気に鳴いたとしぞーに、ごめんねと謝る。
小さな体は気だるげに寝転がったままだが、以前のきりっとした顔が戻り始めていた。その様子に少しだけ気を緩めた。
「土方先生の家に居させてもらえるって。良かったね」
「……」
「どうしたの?また具合悪い?」
丸まって顔を隠されてしまった。真っ黒なしっぽが不機嫌そうにキャリーバッグを叩く。
「おい、遠慮するなって言ってるだろ」
としぞーそんな事をしている間に、待ちかねた先生が戻って来てしまった。
「あの……としぞーが」
「なんかあったか」
「みっ!」
「……いえ、大丈夫だったみたい、です」
何となくだが「自分のことは気にするな」と、としぞーに言われた気がする。
とりあえず、これだけ元気に鳴けるなら大丈夫そうだ。
「なら良い。もし何かあったら言えよ」
「はい」
やっぱり、先生が居るときのとしぞーは少しおかしい。
――良い子にしててね。
丸い毛玉になったままのとしぞーに念を込めて、今度こそ先生の後に付いて行った。
「えっと……ちづ?ごめんね。今日だけちょっとベッド貸してね」
「にゃあっ」
キャリーバッグの中では休まらないだろうから、ちづのベッドを使えば良いと先生に言われ、恐る恐るとしぞーを寝かせてみる。
ちづの様子を伺ってみても、特に嫌がっていないようだ。
穏やかに眠り始めたとしぞーを見て、やっと体から力が抜けた。
「みっ」
としぞーが落ち着いたところで、ちづがベッドに空いた隙間にちょこんと座る。
――……やっぱり、他の猫が使うのは嫌かな?
先生曰く、寝室にもう1つ猫用ベッドがあるらしいのだが。
どうしようかと考えている間に、ちづがとしぞーの体を舐め始めた。不満がある訳ではなかったようだ。
「……にゃ」
としぞーの顔も穏やかそうだ。
2匹ともまだ小さい子猫なので、ベッドにもある程度の余裕がある。
「ふふ、ありがとう」
「……ちづ、そいつは具合が悪いからそっとしとけ」
「としぞー、とっても気持ちよさそうだし、大丈夫ですよ?」
「なら……いいんだが……」
歯切れが悪い様子でそれだけ言うと、先生がまたキッチンに戻る。どうやらお茶を用意してくれているらしい。
としぞーの様子に気を取られていて、ちっとも気付けなかった。
「ご迷惑かけているのに、すみません。私にやらせて下さい」
「別にこれくらい何でもない。それより、お前自身は落ち着いたか?」
いつものように、頭を軽くぽんぽんと撫でられる。
「――はい……本当に、ありがとうございます」
手伝いを申し出たはずなのに、逆に気を遣わせてしまった。
微笑を浮かべた優しい視線を向けられれば、もうお礼を言葉にするだけで精一杯だ。
それから何とか話を聞き出せば、どうやら先生は夜勤ではなく、残業をしていたらしい。いくら仕方のない状況だったとはいえ、余計申し訳ない。
しかも、同じ状況になれば誰でも家に上がれてしまうのかと思えば、勝手に胸がちくりと痛んだ。
「みっ」
ソファに座りながら、眠るとしぞーの背中を撫でる。すると、一緒のベッドで2匹ぴったりとくっついて寝ていたちづが、私の手に擦り寄ってきた。
「ちづも、撫でて欲しいの?」
「にゃーぁ」
頭から背中を何度もゆっくり撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らす。
としぞーは艶のある短い毛並みなので、ちづのふわふわな体が新鮮だ。何と言っても、まん丸な目に人懐こい性格が可愛くて仕方ない。
2匹で寝ているのを見ていると、こんな時に不謹慎と自覚しながら、思い切り愛でたい衝動に駆られてしまう。
「ちづは、ふわふわだね」
「……み……」
「としぞーと、仲良くしてくれて……よかった……」
――今日は、とても疲れた。
一気に眠気が押し寄せてくる。
としぞーを心配するのに頭がいっぱいで、先生の家に来てから時計すら確認していない。しかし、気持ち良さそうに眠り始めたちづにつられて、いつの間にか私の瞼も閉じていた。
次回で最終回です。
2人と2匹になるまで (6)
「そんな緊張してないで、早く入れよ」
「お邪魔しますっ……!」
玄関に入るなり遠慮するなと言い残し、すたすたと歩いて行く先生の背中をぼんやりと眺める。
今、自分が先生の家に居るなんて嘘みたいだ。
「……にゃ」
「あっ……!疲れたよね?すぐ休ませてあげるからね」
不満気に鳴いたとしぞーに、ごめんねと謝る。
小さな体は気だるげに寝転がったままだが、以前のきりっとした顔が戻り始めていた。その様子に少しだけ気を緩めた。
「土方先生の家に居させてもらえるって。良かったね」
「……」
「どうしたの?また具合悪い?」
丸まって顔を隠されてしまった。真っ黒なしっぽが不機嫌そうにキャリーバッグを叩く。
「おい、遠慮するなって言ってるだろ」
としぞーそんな事をしている間に、待ちかねた先生が戻って来てしまった。
「あの……としぞーが」
「なんかあったか」
「みっ!」
「……いえ、大丈夫だったみたい、です」
何となくだが「自分のことは気にするな」と、としぞーに言われた気がする。
とりあえず、これだけ元気に鳴けるなら大丈夫そうだ。
「なら良い。もし何かあったら言えよ」
「はい」
やっぱり、先生が居るときのとしぞーは少しおかしい。
――良い子にしててね。
丸い毛玉になったままのとしぞーに念を込めて、今度こそ先生の後に付いて行った。
「えっと……ちづ?ごめんね。今日だけちょっとベッド貸してね」
「にゃあっ」
キャリーバッグの中では休まらないだろうから、ちづのベッドを使えば良いと先生に言われ、恐る恐るとしぞーを寝かせてみる。
ちづの様子を伺ってみても、特に嫌がっていないようだ。
穏やかに眠り始めたとしぞーを見て、やっと体から力が抜けた。
「みっ」
としぞーが落ち着いたところで、ちづがベッドに空いた隙間にちょこんと座る。
――……やっぱり、他の猫が使うのは嫌かな?
先生曰く、寝室にもう1つ猫用ベッドがあるらしいのだが。
どうしようかと考えている間に、ちづがとしぞーの体を舐め始めた。不満がある訳ではなかったようだ。
「……にゃ」
としぞーの顔も穏やかそうだ。
2匹ともまだ小さい子猫なので、ベッドにもある程度の余裕がある。
「ふふ、ありがとう」
「……ちづ、そいつは具合が悪いからそっとしとけ」
「としぞー、とっても気持ちよさそうだし、大丈夫ですよ?」
「なら……いいんだが……」
歯切れが悪い様子でそれだけ言うと、先生がまたキッチンに戻る。どうやらお茶を用意してくれているらしい。
としぞーの様子に気を取られていて、ちっとも気付けなかった。
「ご迷惑かけているのに、すみません。私にやらせて下さい」
「別にこれくらい何でもない。それより、お前自身は落ち着いたか?」
いつものように、頭を軽くぽんぽんと撫でられる。
「――はい……本当に、ありがとうございます」
手伝いを申し出たはずなのに、逆に気を遣わせてしまった。
微笑を浮かべた優しい視線を向けられれば、もうお礼を言葉にするだけで精一杯だ。
それから何とか話を聞き出せば、どうやら先生は夜勤ではなく、残業をしていたらしい。いくら仕方のない状況だったとはいえ、余計申し訳ない。
しかも、同じ状況になれば誰でも家に上がれてしまうのかと思えば、勝手に胸がちくりと痛んだ。
「みっ」
ソファに座りながら、眠るとしぞーの背中を撫でる。すると、一緒のベッドで2匹ぴったりとくっついて寝ていたちづが、私の手に擦り寄ってきた。
「ちづも、撫でて欲しいの?」
「にゃーぁ」
頭から背中を何度もゆっくり撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らす。
としぞーは艶のある短い毛並みなので、ちづのふわふわな体が新鮮だ。何と言っても、まん丸な目に人懐こい性格が可愛くて仕方ない。
2匹で寝ているのを見ていると、こんな時に不謹慎と自覚しながら、思い切り愛でたい衝動に駆られてしまう。
「ちづは、ふわふわだね」
「……み……」
「としぞーと、仲良くしてくれて……よかった……」
――今日は、とても疲れた。
一気に眠気が押し寄せてくる。
としぞーを心配するのに頭がいっぱいで、先生の家に来てから時計すら確認していない。しかし、気持ち良さそうに眠り始めたちづにつられて、いつの間にか私の瞼も閉じていた。
PR
この記事にコメントする