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(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)
猫パロ5話です。そろそろ終盤。
2人と2匹になるまで (5)
お互いの名を、拾った猫に名付けていたのを知って数週間。
自惚れかもしれないが、子猫たちの話しを通しながら、先生もいろんな事を話をしてくれるようになった。
もっぱら長毛で人懐こい『ちづ』の話しばかりではあるのだが。その話をしている先生は自然と柔らかい顔をする。
――よっぽど、あのふわふわな子猫を可愛がっているんだろうなあ
うらやましいなんて思ってしまった気持ちは、ぐっと飲み込む。
ただ、診察の時間だけでは話す内容も限られてしまうことはいつも寂しい。忙しい土方先生に、もっと話に付き合って欲しいなんて言えないので、会話を適当なところで終わらせている。
でも、たくさん話せたところで、私みたいな子供が相手にされる訳がない。
「はあ……どうすれば良いかな。ね、としぞー」
話し相手が欲しくて、いつもついとしぞーに話しかける。
「……としぞー?」
「……み……」
何だか様子がおかしい。
先程まで彼専用のベッドですやすやと眠っていたはずなのに、丸めた体が少し崩れている。呼吸に合わせて動く背中から、いつもより荒い息をしているのが分かった。
「えっ……?ど、どうしたの?」
小さい体を抱き抱えてみても、ぐったりと辛そうにするだけ。
一気に血の気が下がって、頭が真っ白になる。
――どうしよう
としぞーはまだ子猫なのだ。少しの病気で命が危ないかもしれない。
背中にいやな汗が流れ伝った。
落ち着かないといけないのは分かっているが、心臓がうるさい。
「……にゃ」
ひどく狼狽している私を励まそうとしたのか、としぞーが首を上げるように身じろいだ。しかし、結局はぐったりとするだけだった。
「大丈夫だからね……!」
混乱から無意識に浮かんできた涙を堪えて、縋る思いで携帯を掴んだ。
◇ ◇ ◇
「――土方先生…っ!」
「あんま慌てるな。そこで大人しくしてろ」
夜勤だったのか、もう遅い時間というのに病院にいた土方先生が、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
いつもより力を込めて撫でられたのは、私を励ます為だろうか少し心が軽くなる。
我慢していた涙がうっかり零れそうになったが、今はそれどころではないと、きゅっと唇を引き結んだ。
――飼い主の私が、しっかりしなくちゃ
「大人しく待合室で待ってろ」
そう告げて診察室に入っていく土方先生と斎藤さんの背中を、祈るように見つめた。
「……まあ、いわゆる猫風邪だな。しばらく家で安静にしてれば大丈夫だろ」
「よかった……!」
先生の言葉に、我慢していた涙がついにぽろりと落ちた。
「としぞー、ごめんね」
「にゃーぁ」
頭を撫でようと手を差し出せば、顔を擦り寄せて大丈夫だと言うように鳴く。紫苑色の目には、幾分か力が戻っていた。
「薬は出すが、また様子がおかしかったらすぐ連絡してこい」
「あ……はい」
先程のぐったりとしたとしぞーを思い浮かべて、思わず顔を歪めた。
また体調が悪くなったらと思うと、いやでも不安になってしまう。
「そんな顔するな」
「うっ……すみません、大丈夫です」
「……そんなに不安なら、俺の家に居させるか?」
「――え?」
先生の口から飛び出した言葉に、一瞬自分の耳を疑う。
「今、混んでてな。入院させてやれないんだよ。俺の家で良かったら見ててやれる」
「でも……!そんな迷惑は…」
「別に猫一匹くらい何でもない」
「ですが……」
「ぐだぐだうるせえな。家にいる俺を急患で呼び出すよりマシだろ?」
戸惑う私を尻目に、先生は白衣を脱いで帰る準備を始めてしまう。
鞄を持った反対の手には猫用のキャリーケース。メッシュの部分からうっすら見える毛糸の玉のような生き物は子猫のちづだろうか……どうやら寝ているようだ。
「言っとくが、お前も来るんだからな」
「……え?」
「飼い主の目も無いのに、自宅に置いとける訳ねえだろ」
「………」
決定事項のように言われてしまった。
「おい、なに呆けてんだ。早く行くぞ」
「は、はいっ」
――これは、違う意味で大変になってしまったかも……?
急かす先生の声に、ほとんど頭が回らないまま、後ろを小走りでついて行く。
弱った体で思い通りに鳴けないとしぞーが、不機嫌極まりない声で、必死に鳴いているのに気づかないまま。
猫パロ5話です。そろそろ終盤。
2人と2匹になるまで (5)
お互いの名を、拾った猫に名付けていたのを知って数週間。
自惚れかもしれないが、子猫たちの話しを通しながら、先生もいろんな事を話をしてくれるようになった。
もっぱら長毛で人懐こい『ちづ』の話しばかりではあるのだが。その話をしている先生は自然と柔らかい顔をする。
――よっぽど、あのふわふわな子猫を可愛がっているんだろうなあ
うらやましいなんて思ってしまった気持ちは、ぐっと飲み込む。
ただ、診察の時間だけでは話す内容も限られてしまうことはいつも寂しい。忙しい土方先生に、もっと話に付き合って欲しいなんて言えないので、会話を適当なところで終わらせている。
でも、たくさん話せたところで、私みたいな子供が相手にされる訳がない。
「はあ……どうすれば良いかな。ね、としぞー」
話し相手が欲しくて、いつもついとしぞーに話しかける。
「……としぞー?」
「……み……」
何だか様子がおかしい。
先程まで彼専用のベッドですやすやと眠っていたはずなのに、丸めた体が少し崩れている。呼吸に合わせて動く背中から、いつもより荒い息をしているのが分かった。
「えっ……?ど、どうしたの?」
小さい体を抱き抱えてみても、ぐったりと辛そうにするだけ。
一気に血の気が下がって、頭が真っ白になる。
――どうしよう
としぞーはまだ子猫なのだ。少しの病気で命が危ないかもしれない。
背中にいやな汗が流れ伝った。
落ち着かないといけないのは分かっているが、心臓がうるさい。
「……にゃ」
ひどく狼狽している私を励まそうとしたのか、としぞーが首を上げるように身じろいだ。しかし、結局はぐったりとするだけだった。
「大丈夫だからね……!」
混乱から無意識に浮かんできた涙を堪えて、縋る思いで携帯を掴んだ。
◇ ◇ ◇
「――土方先生…っ!」
「あんま慌てるな。そこで大人しくしてろ」
夜勤だったのか、もう遅い時間というのに病院にいた土方先生が、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
いつもより力を込めて撫でられたのは、私を励ます為だろうか少し心が軽くなる。
我慢していた涙がうっかり零れそうになったが、今はそれどころではないと、きゅっと唇を引き結んだ。
――飼い主の私が、しっかりしなくちゃ
「大人しく待合室で待ってろ」
そう告げて診察室に入っていく土方先生と斎藤さんの背中を、祈るように見つめた。
「……まあ、いわゆる猫風邪だな。しばらく家で安静にしてれば大丈夫だろ」
「よかった……!」
先生の言葉に、我慢していた涙がついにぽろりと落ちた。
「としぞー、ごめんね」
「にゃーぁ」
頭を撫でようと手を差し出せば、顔を擦り寄せて大丈夫だと言うように鳴く。紫苑色の目には、幾分か力が戻っていた。
「薬は出すが、また様子がおかしかったらすぐ連絡してこい」
「あ……はい」
先程のぐったりとしたとしぞーを思い浮かべて、思わず顔を歪めた。
また体調が悪くなったらと思うと、いやでも不安になってしまう。
「そんな顔するな」
「うっ……すみません、大丈夫です」
「……そんなに不安なら、俺の家に居させるか?」
「――え?」
先生の口から飛び出した言葉に、一瞬自分の耳を疑う。
「今、混んでてな。入院させてやれないんだよ。俺の家で良かったら見ててやれる」
「でも……!そんな迷惑は…」
「別に猫一匹くらい何でもない」
「ですが……」
「ぐだぐだうるせえな。家にいる俺を急患で呼び出すよりマシだろ?」
戸惑う私を尻目に、先生は白衣を脱いで帰る準備を始めてしまう。
鞄を持った反対の手には猫用のキャリーケース。メッシュの部分からうっすら見える毛糸の玉のような生き物は子猫のちづだろうか……どうやら寝ているようだ。
「言っとくが、お前も来るんだからな」
「……え?」
「飼い主の目も無いのに、自宅に置いとける訳ねえだろ」
「………」
決定事項のように言われてしまった。
「おい、なに呆けてんだ。早く行くぞ」
「は、はいっ」
――これは、違う意味で大変になってしまったかも……?
急かす先生の声に、ほとんど頭が回らないまま、後ろを小走りでついて行く。
弱った体で思い通りに鳴けないとしぞーが、不機嫌極まりない声で、必死に鳴いているのに気づかないまま。
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