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今回は千鶴ちゃんととしぞーのターン♪

まだまだのんびりと続きます。

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拍手[21回]







2人と2匹になるまで (2)









「お千ちゃん、いつもごめんね」
「いいのいいの!困ったときはお互い様でしょ?」

大学の帰り、親友のお千ちゃんの家に寄らせてもらっていた。

「今日も大人しくていい子でしたよ」
「君菊さん、いつもすいません」
「うにゃー」

半日ぶりに会ったとしぞーが、構ってくれと尻尾を揺らしながら私の足元に擦り寄る。

「やっと私達にも撫でさせてくれる様になったけど…やっぱり千鶴ちゃんにしか懐かないのよねえ」

まだまだ子猫のとしぞーを置いて家を空ける訳にはいかなくて、大学の講義があるときはお千ちゃんの家で預かってもらうのが恒例になっていた。
ほとんどは君菊さんにお世話してもらっているが、あまり懐くことはないらしい。
他人の子猫を預かるなんて、それだけで神経を使うだろうに、少し申し訳ない。

「うーん…この前は土方先生にまた爪立てちゃったし……何でだろう?」
「それって、前に言ってた動物病院の先生?」
「えっ?う、うん」
「はあ、顔赤くしちゃって可愛いんだから」
「お、お千ちゃん!」
「にゃっ!」

抱っこしていたとしぞーが、両手を掲げて首筋にぴたりと張り付いてくる。
やはり寂しかったのだろうかと思い、優しく背中を撫でると喉をごろごろと鳴らす。
としぞーを拾って1ヶ月、まだまだ子猫だが体重も増えてきて、元気に成長してくれている事が嬉しい。

「としぞーが先生に爪を立てる気持ち、私には分かるかも……」
「 ? 」
「みー!」

先程から、お千ちゃんの言葉に反応を示すとしぞー。私以外には懐かないなんて、本当なのだろうか。

「としぞーには悪いけど……うまくいくと良いね」
「えっと、としぞーはそんな事気にしてないと思うんだけど……それに、先生とは、お話してもらえるだけで、私は十分なの」
「またそんな塩らしい事言っちゃって……私が男だったら、すぐお嫁にもらうのに!」
「きゃっ!」
「み゛ゃ!?」

抱き着いてきたお千ちゃんとの間で、としぞーが潰されて悲鳴をあげる。

「だ、大丈夫?」
「み……」
「ご主人の恋路を邪魔するからよ」

私からとしぞーを引きはがしたお千ちゃんが、千鶴ちゃんの幸せをとか気に入らないのは分かるけどとか、としぞーに向かって真剣に話しかけている。としぞーの眉間にはいつもの皴。

「やっぱり、土方先生にそっくりだなあ…」

そんな事言ったら、先生は気を悪くするかもしれないけど。

「あら、そうなの?どのあたりが?」
「えっ……!」
「ほらほら、恥ずかしがらない!」

身を乗り出してくるお千ちゃんの目が本気だ。
その証拠に、としぞーを持ち上げている手が少しずつ強くなっている。

「お、お千ちゃん、としぞーが……」
「あら、ごめんね」
「みーっ!」
「……でも、こんな気難しい猫と似てる男が良いの?」

じたばたと手足を振って嫌々するとしぞーを、お千ちゃんから落とさない様にそっと受け取って胸に抱く。
両手で優しく包む様にすれば、少しは落ち着いてくれた様だ。

「ひ、土方先生は気難しくないよ……すごく優しいし、立派なお医者さんで、大人だし……」

――だから、私みたいな子供が、相手にされる訳ないの。

そう続けるつもりだったのに、思わずつまって言葉にならなかった。
突然黙ってしまった私を、お千ちゃんが心配そうに覗き込む。

動物を飼ったことが無くて不安でいっぱいだった私を、土方先生は嫌な顔一つせず、基本から手取り足取り教えてくれた。愛想の悪いとしぞーの事を、いつも『あいつ』とか『あれ』とか言っているけれど、診察となれば丁寧に診てくれる事も分かっている。
――何より、としぞーを診察に連れていく度に、また大きくなったなと言って柔らかい微笑を見せてくれる事が、とても嬉しくて、同時に胸が締め付けられるようだった。

でも、先生が親切にしてくれるのは、拾った子猫の飼い主が私だっただけなんだって、本気で好きになっちゃいけないって、自分に何回も言い聞かせたはずなのに……おかしいな。
気付けば、涙が静かに頬を伝っていた。

「私は、そうは思わないけどな」
「……え?」
「好きなんでしょ?ちゃんと自信持たなきゃ!」
「う、ん……私の考えてること、分かっちゃった?」
「当たり前じゃない!何年友達やってると思ってるの?見くびらないでね」
「ありがとう、お千ちゃん……」

大好きな親友の手をぎゅっと握る。
そうだよね。
こんなに好きになった人は初めてなのに、諦めるのは早すぎる。
気持ちを伝える勇気はまだ出ないけど、好きになってもらう努力はしなきゃ。

「にゃ」

としぞーが小さな舌で、涙が流れた跡を舐めてくれる。

「……としぞーも、ありがとう」
「それに、仮にとしぞーがその先生に似てるとしたら、千鶴ちゃんに懐くって事じゃない?」
「な、懐くなんてそんな……」
「にゃ゛ーあーー!」
「お前も懲りないわねえ」

また、お千ちゃんととしぞーの言い争い(?)が始まってしまう。

――…明日は検診なんだけど、こんな調子で大丈夫かな?

そんな私の不安を余所に、としぞーの眉間には深々と皺が刻まれていった。



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