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土千転生シリーズです。
再会編3話目です。前話はこちら (1) (2)
2014/2/16 設定を残して書き直し
桜色の鍵 (3)
「あの、歳三さん」
「ん?」
「この体勢はどうして……」
玄関から部屋に入ったは良いが、リビングに直行した歳三さんにされるがままだった。
三人は掛けられそうな広いソファ。そこに座った彼の膝の上で、横抱きにされている。
前方にあるテレビは、一人暮らし用に買い求めた千鶴のものより遥かに大きいが、点いていないので部屋は静かだ。
大きくとられた窓から見える空はオレンジ色に焼けている。
いつからここに住んでいますかとか、何のお仕事をしているのですかとか、いろんな言葉が浮かぶのに、胸がいっぱいでなかなか声にならない。
片方の手をぎゅっと握られたらさらに高揚してしまって、始末に負えなくなっていた。
歳三さんも言葉は少なくて、でも気まずくは感じない。
ジャケットを脱いでネクタイを外した彼の体温は先程よりあたたかくて、そっと寄り添う。
どこに頭を置こうか考えていたら、胸にやさしく押し付けられた。
「どうしてって、ここはおまえの定位置だろうが」
「……っ」
確かにそうだ。
この場所は、私の定位置だった。
歳三さんのことを思わない日はなかったけれど、一人きりで幸せだった時分を思い出すのは辛すぎて、無意識に避けるようになってしまっていた。
でも、もう一人じゃない。
鼻の奥がつんと痛くなって、たちまち視界がぼやける。
「……あ」
「またか。仕方ねえな」
「だって、嬉しくて。わたし……ずっと探してました、歳三さんのこと、ずっと……!」
「ああ、俺もだよ。やっと会えたな……千鶴」
涙を拭おうとしてくれる手と一緒に顔を寄せられて、また唇を塞がれる。
とても、とても心地良い。
聞きたいことも伝えたいこともたくさんあるのに、受け入れる以外の選択肢が出てこない。
何より、今こうして歳三さん触れていることが、再会できたという事実を一番実感できる。
背をやさしく撫でる手に全てを委ねてしまおうか――と体の力を抜く直前、ぱっと彼の顔が離れてしまった。
「……理性が保つうちに、言葉くらい交わしておくか……」
「え?」
呟いたらしい言葉は、小さすぎて聞き取ることができない。
しかし、本人は真剣な表情だ。
そのまま真っ直ぐ見据えられて、思わず背筋をぴんと伸ばした。
つい小姓だった頃を思い出したけれど、歳三さんの膝の上に乗せられている現状では似ても似つかない。
「千鶴」
「は、はい」
「見つけたら、絶対に離してやらねえって言ったの、覚えてるか」
「もちろん覚えてます。忘れる訳ありません」
「じゃあ、また俺のものにするけど良いよな? ――って聞いたところで、異論は認めないが」
だから早く頷けと瞳を覗き込まれる。
すぐに答えようとしたけれど、余裕に見える彼の瞳に一欠片の不安を見た気がして、声がつまった。
もし前世を覚えていなかったら――と千鶴が憂いを抱えていたように、歳三さんも同じ気持ちだったのだろうか。
お互いに無駄な気苦労だったと落胆する一方、再会を果たした今となっては、勝る喜びの方が大きい。
「……桜を、一緒に見に行ってくれるなら」
「条件付きとは、言う様になったじゃねえか」
「だって約束しました。忘れたなんて言わせません」
「俺だってちゃんと覚えてるし、見に行くに決まってんだろ。そんなにむくれるな」
「……ごめんなさい」
思わず躍起になってしまった。
子どものようで恥ずかしいと俯けば、頬に手を当てられて戻されてしまう。
目が合うといちいち胸がときめくので、よけいに恥ずかしい。きっと私の顔は赤いのだろう。
それを見つめてくる歳三さんの顔は嬉しそうだ。
「――で? もう俺のもので良いんだよな?」
「はい。……でも、わざわざ聞かなくたって、私はずっとあなたのものですよ」
たとえ、ずっと会えなかったとしても変わらない。歳三さんしか好きになれないのだから。
本心からそう告げたのに、なぜか目を見開かれてしまった。
何か驚かせることを言っただろうか。
「えっと、わたし何かおかしなことを」
「いや違う。久しぶりで俺が対応しきれなかっただけだ」
「?」
何が久しぶりで、何を対応するというのだろう。
首を傾げていたら、腰を抱く腕が強くなった。
「やっぱり敵わねえなあ」
眉間の皺を寄せて困ったように笑う。
ずっと焦がれていた目の前の光景が、たまらなく眩しい。
「愛してるよ、千鶴」
「わたしも、愛しています……!」
重なる唇は、何度目でも心地よくて体が震える。
また泣いたら笑われてしまうだろうか。
でも、今ばかりは許して欲しかった。
<続>
再会編3話目です。前話はこちら (1) (2)
2014/2/16 設定を残して書き直し
桜色の鍵 (3)
「あの、歳三さん」
「ん?」
「この体勢はどうして……」
玄関から部屋に入ったは良いが、リビングに直行した歳三さんにされるがままだった。
三人は掛けられそうな広いソファ。そこに座った彼の膝の上で、横抱きにされている。
前方にあるテレビは、一人暮らし用に買い求めた千鶴のものより遥かに大きいが、点いていないので部屋は静かだ。
大きくとられた窓から見える空はオレンジ色に焼けている。
いつからここに住んでいますかとか、何のお仕事をしているのですかとか、いろんな言葉が浮かぶのに、胸がいっぱいでなかなか声にならない。
片方の手をぎゅっと握られたらさらに高揚してしまって、始末に負えなくなっていた。
歳三さんも言葉は少なくて、でも気まずくは感じない。
ジャケットを脱いでネクタイを外した彼の体温は先程よりあたたかくて、そっと寄り添う。
どこに頭を置こうか考えていたら、胸にやさしく押し付けられた。
「どうしてって、ここはおまえの定位置だろうが」
「……っ」
確かにそうだ。
この場所は、私の定位置だった。
歳三さんのことを思わない日はなかったけれど、一人きりで幸せだった時分を思い出すのは辛すぎて、無意識に避けるようになってしまっていた。
でも、もう一人じゃない。
鼻の奥がつんと痛くなって、たちまち視界がぼやける。
「……あ」
「またか。仕方ねえな」
「だって、嬉しくて。わたし……ずっと探してました、歳三さんのこと、ずっと……!」
「ああ、俺もだよ。やっと会えたな……千鶴」
涙を拭おうとしてくれる手と一緒に顔を寄せられて、また唇を塞がれる。
とても、とても心地良い。
聞きたいことも伝えたいこともたくさんあるのに、受け入れる以外の選択肢が出てこない。
何より、今こうして歳三さん触れていることが、再会できたという事実を一番実感できる。
背をやさしく撫でる手に全てを委ねてしまおうか――と体の力を抜く直前、ぱっと彼の顔が離れてしまった。
「……理性が保つうちに、言葉くらい交わしておくか……」
「え?」
呟いたらしい言葉は、小さすぎて聞き取ることができない。
しかし、本人は真剣な表情だ。
そのまま真っ直ぐ見据えられて、思わず背筋をぴんと伸ばした。
つい小姓だった頃を思い出したけれど、歳三さんの膝の上に乗せられている現状では似ても似つかない。
「千鶴」
「は、はい」
「見つけたら、絶対に離してやらねえって言ったの、覚えてるか」
「もちろん覚えてます。忘れる訳ありません」
「じゃあ、また俺のものにするけど良いよな? ――って聞いたところで、異論は認めないが」
だから早く頷けと瞳を覗き込まれる。
すぐに答えようとしたけれど、余裕に見える彼の瞳に一欠片の不安を見た気がして、声がつまった。
もし前世を覚えていなかったら――と千鶴が憂いを抱えていたように、歳三さんも同じ気持ちだったのだろうか。
お互いに無駄な気苦労だったと落胆する一方、再会を果たした今となっては、勝る喜びの方が大きい。
「……桜を、一緒に見に行ってくれるなら」
「条件付きとは、言う様になったじゃねえか」
「だって約束しました。忘れたなんて言わせません」
「俺だってちゃんと覚えてるし、見に行くに決まってんだろ。そんなにむくれるな」
「……ごめんなさい」
思わず躍起になってしまった。
子どものようで恥ずかしいと俯けば、頬に手を当てられて戻されてしまう。
目が合うといちいち胸がときめくので、よけいに恥ずかしい。きっと私の顔は赤いのだろう。
それを見つめてくる歳三さんの顔は嬉しそうだ。
「――で? もう俺のもので良いんだよな?」
「はい。……でも、わざわざ聞かなくたって、私はずっとあなたのものですよ」
たとえ、ずっと会えなかったとしても変わらない。歳三さんしか好きになれないのだから。
本心からそう告げたのに、なぜか目を見開かれてしまった。
何か驚かせることを言っただろうか。
「えっと、わたし何かおかしなことを」
「いや違う。久しぶりで俺が対応しきれなかっただけだ」
「?」
何が久しぶりで、何を対応するというのだろう。
首を傾げていたら、腰を抱く腕が強くなった。
「やっぱり敵わねえなあ」
眉間の皺を寄せて困ったように笑う。
ずっと焦がれていた目の前の光景が、たまらなく眩しい。
「愛してるよ、千鶴」
「わたしも、愛しています……!」
重なる唇は、何度目でも心地よくて体が震える。
また泣いたら笑われてしまうだろうか。
でも、今ばかりは許して欲しかった。
<続>
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