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二人と二匹で、同居はじめました。(3)
「ああっ、また! としぞー、そこに入っちゃだめだってば」
「……みぃ」
「そんな顔してもだめ」
「ちづ、お前もだ。荷解きが進まねえじゃねえか」
「にゃ……」
としぞーを抱き上げて空のダンボールから出す。隣にいる土方先生も、ちづをひょいと持ち上げて床に下ろした。
「もう。いい子にしててね」
がちがちに緊張したまま、今日から暮らすマンションの部屋にあがった。お邪魔しますと噛みながら言えば、「今日からおまえの家でもあるのに緊張しすぎだ」と先生に笑われる始末。
ところが、緊張を隠すように荷解きを始めると、空いたダンボールにとしぞーとちづが次々入ってしまうという状況に陥っていた。
出してはまた入るの繰り返しで、手伝ってくれている土方先生も困り顔だ。でも、正直に言えば、ずっと緊張していた体からすこし力が抜けた。
「埒があかねえな。よし、俺がこいつらの相手してるから、その間にとりあえず荷物出しとけ」
「えっ」
「にゃ!?」
「みっ?」
土方先生が二匹をひょいひょいと腕に抱える。途端にじたばたと暴れ始めるとしぞーだったが、すり寄って来たちづを見て大人しくなった。
(良かった)
としぞーはあまり表情が無いから分かりにくいけれど、ここに着いてからとずっと落ち着かなかった。子猫なのに、突然環境を変えるなんて無理をさせている。
だからこそ、ちづが居てくれて本当に良かった。
「リビングにいるから、ダンボールが全部なくなったら来い。休憩にするぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「急ぎすぎて荷物ひっくり返すなよ?」
「うっ……確かに、いつも助けてもらってばかりですけど、そんなにそそっかしくありません!」
「ああ悪い。つい、ちづに注意するみたいになっちまう」
すねる私の頭にぽんと手をおいて、先生が立ち上がる。二匹を抱えたまま、ダンボールを適当に足でどかしてスリッパを探し出した。
「ほら行くぞ。とくにお前は暴れんなよ? 落っこちたらどうすんだ」
「……み」
「にゃ!」
ちづは土方先生に抱っこされてごきげんだ。一方、としぞーは逃れることをようやく諦めたらしい。むっつりとした顔のまま先生の腕に収まっていて、思わずくすりとしてしまった。
「そうだ。先生、これ持って行ってください」
「なんだ?」
「としぞー、このおもちゃがお気に入りなんです。もし先生の言うことを聞かなかったら使って下さい」
「分かった、ありがとな」
先生がおもちゃを受け取って部屋から出て行った。
リビングへ続く廊下から、『今日から俺も家主なんだから、少しは愛想よくしたらどうだ』とか、説教をする土方先生の声と、不機嫌だったり楽しそうだったりする二匹の鳴き声が聞こえてくる。
「……ふふっ」
土方先生と一緒に暮らすことばかりで頭がいっぱいだったけれど、としぞーとちづがいる暮らしはとても楽しそうだ。先生も、同居人がいた方が楽しいと思ってくれたら嬉しい。
そう思うと、付き合ってないとか、好きかどうかとか、自分勝手な考えばかりだった自分に嫌気がさす。
(しっかりしなくちゃ!)
家事は一通りできるつもりでいるけれど、緊張したままでは失敗の繰り返しになりそうだ。すぐに良いところは見せられなくても、せめていつも通りにこなしたい。
胸に手を当てて、ゆっくりと深呼吸をした。
そうだ。何より今は、目の前にある片づけだろう。
気合いいっぱいに腕まくりをして、段ボールの片付けに取りかかった。
<続>
二人と二匹で、同居はじめました。(3)
「ああっ、また! としぞー、そこに入っちゃだめだってば」
「……みぃ」
「そんな顔してもだめ」
「ちづ、お前もだ。荷解きが進まねえじゃねえか」
「にゃ……」
としぞーを抱き上げて空のダンボールから出す。隣にいる土方先生も、ちづをひょいと持ち上げて床に下ろした。
「もう。いい子にしててね」
がちがちに緊張したまま、今日から暮らすマンションの部屋にあがった。お邪魔しますと噛みながら言えば、「今日からおまえの家でもあるのに緊張しすぎだ」と先生に笑われる始末。
ところが、緊張を隠すように荷解きを始めると、空いたダンボールにとしぞーとちづが次々入ってしまうという状況に陥っていた。
出してはまた入るの繰り返しで、手伝ってくれている土方先生も困り顔だ。でも、正直に言えば、ずっと緊張していた体からすこし力が抜けた。
「埒があかねえな。よし、俺がこいつらの相手してるから、その間にとりあえず荷物出しとけ」
「えっ」
「にゃ!?」
「みっ?」
土方先生が二匹をひょいひょいと腕に抱える。途端にじたばたと暴れ始めるとしぞーだったが、すり寄って来たちづを見て大人しくなった。
(良かった)
としぞーはあまり表情が無いから分かりにくいけれど、ここに着いてからとずっと落ち着かなかった。子猫なのに、突然環境を変えるなんて無理をさせている。
だからこそ、ちづが居てくれて本当に良かった。
「リビングにいるから、ダンボールが全部なくなったら来い。休憩にするぞ」
「あ、ありがとうございます!」
「急ぎすぎて荷物ひっくり返すなよ?」
「うっ……確かに、いつも助けてもらってばかりですけど、そんなにそそっかしくありません!」
「ああ悪い。つい、ちづに注意するみたいになっちまう」
すねる私の頭にぽんと手をおいて、先生が立ち上がる。二匹を抱えたまま、ダンボールを適当に足でどかしてスリッパを探し出した。
「ほら行くぞ。とくにお前は暴れんなよ? 落っこちたらどうすんだ」
「……み」
「にゃ!」
ちづは土方先生に抱っこされてごきげんだ。一方、としぞーは逃れることをようやく諦めたらしい。むっつりとした顔のまま先生の腕に収まっていて、思わずくすりとしてしまった。
「そうだ。先生、これ持って行ってください」
「なんだ?」
「としぞー、このおもちゃがお気に入りなんです。もし先生の言うことを聞かなかったら使って下さい」
「分かった、ありがとな」
先生がおもちゃを受け取って部屋から出て行った。
リビングへ続く廊下から、『今日から俺も家主なんだから、少しは愛想よくしたらどうだ』とか、説教をする土方先生の声と、不機嫌だったり楽しそうだったりする二匹の鳴き声が聞こえてくる。
「……ふふっ」
土方先生と一緒に暮らすことばかりで頭がいっぱいだったけれど、としぞーとちづがいる暮らしはとても楽しそうだ。先生も、同居人がいた方が楽しいと思ってくれたら嬉しい。
そう思うと、付き合ってないとか、好きかどうかとか、自分勝手な考えばかりだった自分に嫌気がさす。
(しっかりしなくちゃ!)
家事は一通りできるつもりでいるけれど、緊張したままでは失敗の繰り返しになりそうだ。すぐに良いところは見せられなくても、せめていつも通りにこなしたい。
胸に手を当てて、ゆっくりと深呼吸をした。
そうだ。何より今は、目の前にある片づけだろう。
気合いいっぱいに腕まくりをして、段ボールの片付けに取りかかった。
<続>
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