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企画参加への提出作品です。
企画サイト様はこちら 「春恋し、君の唄」

テーマは‘‘春に酔ふ‘‘
私は「涅槃西風(ねはんにし)」をお題に選ばせて頂きました。

・ED後 蝦夷夫婦

※死ネタ注意

拍手[16回]










桜が見頃を迎えたので、八つ刻に2人で花見に訪れた。
柔らかい桃色が、2人の目を楽しませてくれる。
嬉しそうに桜を見上げる千鶴に、土方も頬を緩めながら楽しんでいた。

「――…ん、さむ…」
「やっぱり、春とは言ってもまだ冷えるな。」

まだ寒さも残るだろうと思い羽織を着てきたが、予想以上に風が冷たく、千鶴は思わず体を縮こませた。
そんな妻の肩を土方が優しく抱き寄せる。

「今日はもう花見は止めにして帰るか。」
「――…だめ、です…」

それだけ言うと、千鶴は目を逸らして、土方の羽織の裾を緩く握ったまま動かなくなった。
いつもと様子の違う千鶴に、土方が心配そうに顔を覗き込む。

「…千鶴?」
「…だって、だって…歳三さん、今朝から…」

――体調が優れないのではないですか?
千鶴がやっとの思いで絞り出した言葉は、震えて今にも消えそうだった。

漸く土方の顔を見た千鶴の目に入ったのは、苦い笑いを浮かべた旦那の顔であった。

「なんだ…気付いてたのか。」
「…やっぱり、もう、なのですか…?」
「お前は、こういうことには鋭いから敵わねえよなあ…」

千鶴を抱きしめた土方の髪が、ゆっくりと白に染まっていく。
風がその髪をさらりと揺らすと、舞う桜の花弁と相まって、より美しく見える。
涙を見られない様に、千鶴は土方の胸に顔を埋めた。

「…顔見せろ。」
「…泣かないと…別れの時は涙を見せないと、お約束してしまいましたから…」
「じゃあ全部拭ってやるよ。」

武骨な指で涙を拭われた千鶴は、漸く顔を上げた。
柔らかく笑う彼に、自分も笑顔をと思うが、また涙が流れてしまう。

「…しょうがねえなあ。」

再度、涙を拭おうとした土方の指は、千鶴の頬に触れる寸前、灰となって崩れた。

「…もう、か…」
「歳三さん…」
「…千鶴…お前の、幸せだけを願ってる。」
「は、い…」

強く抱きしめられた瞬間、千鶴の腕の中で、土方の体が崩れて消えた。
冬のなごり風が、桜の花弁を舞わせながら、千鶴の腕に残った愛しい体温を奪っていった。




「涅槃西風(ねはんにし)」――春に吹く、冬のなごり風。春の彼岸。



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