忍者ブログ
乙女ゲーム中心の二次創作サイト/小説ONLY
ようこそ♪
作品リスト
メールフォーム
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

土千転生シリーズです。
仲間と再会編8話目。過去作品はこちらからどうぞ→<作品リスト>
2014/9/15設定を残して書き直し

拍手[21回]







空色のつづき(8)




「ここから車だと、近藤さんの道場までは十分くらいだな」

滑らかに車を運転する原田さんが教えてくれる。

「あの、皆さん、わざわざお迎えに来てもらってありがとうございます」
「何言ってんだよ千鶴。俺たちが早く会いたくて、勝手に来たんだって!」
「そうそう。左之が土方さんに頼んで、この役を変わってもらったんだぜ」

隣に座る平助君が晴れやかに笑う。前方の助手席に座る永倉さんは、こちらを振り向いてにかっと歯を見せた。
よく見れば、余計なものが一切ない車内は、深いブラウンを基調とした内装だ。間違いなく、歳三さんの車である。

「……歳三さん、何も言ってくれませんでした」
「ははっ。他の男に行かせるのが癪だったんだろ。迎えの許可取ったときなんて、鬼みたいな顔してたぜ」

原田さんは楽しそうだ。

「というか、千鶴って、土方さんのこと名前で呼ぶんだな……」
「おいおい平助。夫婦だったんだから当たり前だろ」
「ほんとになあ。あの鬼の副長が嫁さんもらって、今世でも惚れ続けてるなんて、信じられねえぜ」
「そ、そうですか……」

確かに、かつて夫婦だったことを皆さんに話してあると歳三さんから聞いていた。
しかし、その事実を、いざ口に出されると何故だか恥ずかしい。今世では、まだ恋人だからそう思ってしまうのだろうか。

「しっかし、土方さんは女子大学生と付き合ってるってことか……なんかこう、やらしいっつうかだな……」
「新八っつあん……土方さんにそれ聞かれたら、殺されてもおかしくないからな」
「千鶴。新八の言うことなんか無視して良いぞ」
「えっと、あの」
「何だと左之!」
「おい! 運転中に掴みかかったりしようとすんな!」
「ちょっと二人共! これ土方さんの車だし、千鶴も乗ってんのに、事故ったらどうすんだよ!」

居たたまれなくて顔を赤くしているうちに、車内はあっという間に賑やかになった。
思わずくすくすと声をあげたら、三人は恥ずかしそうに苦笑いを浮かべ、そそくさと定位置に戻る。
本当に昔に戻った様だ。嬉しくて、顔はつい緩む。

(――…あれ?)

いつの間にか、窓の外は繁華街から住宅街に変わっていた。
品のある家が多く、緑も多い。閑静で好感を持てる場所だが、いわゆる高級住宅街というところではないだろうか。
そうやって思考をめぐらせていると、ふと車の速度が落ちる。

「着いたぞ」

停止した車の窓から見えたのは、堂々たる門構えだった。

「すごい……!」

車から降りてみても、その迫力は変わらない。
門の両脇に続く白塀は長々と続いていて、敷地の広さがうかがえた。

「近藤さんは地主でもあるからさ。この門も家もでかいんだけど、道場もあるから全体が広いしなあ」

横に立つ平助くんが説明してくれる。

「うん、びっくりしちゃった。今日、皆さんが集まる場所も道場なんだよね?」
「おう! 土方さんとか総司は、ここの道場に昔から通ってるらしいんだ。俺たち三人みたいに、会社で再会した仲間もいるんだけどな」
「今では俺たちも、休みの日なんかはここで稽古してるからよ、千鶴ちゃんも遊びに来てくれよな!」
「永倉さん、よろしいんですか?」
「当たり前よ! 何だったら、手作り料理の差し入れとか持って来てくれたら、みんな大喜びだぜ」
「新八っつあん、たまには良いこと言う!」
「ふふ。がんばって作りますね。今から楽しみです」

平助くんと永倉さんがもろ手を挙げて喜んでくれる。
これは作り甲斐がありそうだ。

「おいおい、そこで騒ぐと近所迷惑だろ。早く中に入れって」

車を車庫に入れて来たらしい原田さんが、門の中から手招きをしている。
どうやら、道場は奥のほうにあるらしい。

「原田さんすいません。すぐ行きます」
「千鶴に言ったんじゃねえよ」

急いで門をくぐり、前を進む原田さんの背中を追う。
綺麗に刈られた芝生。そこに置かれた平たい飛び石の上を歩いていくと、目の前に現れたのは立派な日本庭園だった。
日本家屋を思わせる母屋も驚くほどに大きいが、こちらの庭も十分に広い。
鯉が泳ぎまわる池に石の灯籠。左右に末広がった松は美しく、丁寧に育てられているのが分かる。

「とても綺麗です……!」
「すごいだろ? これ全部、近藤さんの趣味だ」
「この庭が見える客間は、会社の接待にも使うんだぜ」

庭を過ぎると、緑が深くなった。
木が生い茂り、葉の隙間から夕焼けがさし込む。
芝生と飛び石もなくなり、固めの土の上を進むと、やっと道場が見えた。
古めかしいが、凛とした佇まい。大切に管理されてきたことが分かる。

「ん? 道場のなか、人の気配がするな」

先頭を歩いていた原田さんが、道場の扉に手をかけようとした、そのとき。
母屋のほうから、ばたばたと忙しない足音が近づいてきた。

「――…やはり、雪村君かい!?」

走って来たのは、千鶴が会いたかった仲間のひとり。
エプロン姿の井上さんだった。

<続>
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
リンク

◇企画参加
           春恋し、君の唄
サイト様
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

Template by 楽楽楽生活(ららららいふ) 自宅でアルバイトしよう!/ Material by 素材くん「無料WEB素材屋」

忍者ブログ [PR]