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土千転生シリーズです。
仲間と再会編6話目。過去作品はこちらからどうぞ→<作品リスト>
2014/7/27設定を残して書き直し
空色のつづき(6)
「土方さんに会えて、本当に良かったね。千鶴ちゃん」
「ありがとう、お千ちゃん。たくさん心配かけてごめんね」
大学の食堂兼カフェで、対面に座るお千ちゃんはすこし涙を浮かべている。
中学のとき再会した彼女には、ずっと心配をかけてきた。前世の記憶を分かち合える唯一の親友。
かつての鬼の姫は、今世でも気品が溢れ美しく、加えて明るく聡明だ。
彼女が一緒に居てくれただけで救われた。
歳三さんを見つけられずに何度も挫けそうになった私を、数えきれないほど励ましてくれた。
自分から行動を起こさなければ、実家を出ようとも思わなかったし、あのマンションで歳三さんに出会うこともなかっただろう。
再会できたと電話で報告したとき、心から喜んでくれたお千ちゃん。
その優しい声に、思わず涙を零したのは記憶に新しい。
「ずっと励ましてくれたお千ちゃんのおかげだよ。本当にありがとう」
「やだ、なに言ってるの。健気に土方さんのこと想い続けた、千鶴ちゃんの気持ちが届いたのよ」
「そ、それは言い過ぎじゃないかな? でもね、私が伝えておきたいの。ありがとう」
「……はあ。そんな笑顔で、そんなこと言われたら反論できないなあ」
困ったように笑って、お千ちゃんが椅子の背もたれに身体を預ける。
春らしい、パステルグリーンのネイルをまっとた手でカフェオレのグラスを取ると、氷がカラカラと音をたてる。
つられて自分のアイスティーを口にした。
綺麗なネイルだねと感想を伝えると、ありがとうと笑い、おすすめのネイルサロンを教えてくれる。
二階のカフェから見える大学の正門には、これから遅めの講義だったり、帰宅したりする学生でにぎわっている。
夕方なので、どちらかといえば帰宅するほうが多い。
千鶴たち一年生は、昨日が入学式だった。そして今日は午後のガイダンスだけ。
クラスの顔合わせといっても、大学の付属だった女子高からの生徒がほとんどで、ガイダンスが終われば仲の良い者同士で帰って行く。
千鶴とお千もその中のひとつだ。
もちろん他にも仲の良い友人たちはいるけれど、アルバイトやサークル見学があるらしい。また来週と言い合い、手を振って別れた。
由緒ある大学らしいが、校舎は建て替わったばかりだという。
お洒落な食堂兼カフェは、いかにも女子大生が好みそうだ。千鶴も例外ではなく、正門から見えることもあって気になっていた。
せっかくだからと言って、お千ちゃんと二人でお茶をしていた。
「真上の部屋が土方さんのお家だったんでしょ? じゃあ、お邪魔するのは難しそうね……千鶴ちゃんのお家に遊びに行くの、楽しみにしてたけど仕方ないかな」
「え……どうして?」
「千鶴ちゃん、土方さんの家で生活してるんでしょう?」
「あっ」
そうだった。
でも、どこか恥ずかしくて、まだお千ちゃんには話していないと思っていたのに。
「わたし、その話してたかな?」
「ううん。でも千鶴ちゃんの話を聞くかぎり、土方さんって独占欲強そうだし、やっと会えた恋人を一人で寝かせるほど心も広くなさそうだし」
「そ、そうかな」
「そうよ。絶対そう。でも、千鶴ちゃんを大切にしてことだけは分かるから、仕方なく邪魔はしないけどね」
とっても今さらだが、もう何年も千鶴の相談役だった彼女には、前世のことも含めていろいろと話してしまっている。
ごめんなさい、歳三さん。
「でも、お千ちゃんには今まで支えてもらったお礼もしたいし、遊びに来て欲しいな。歳三さんにお願いしてみるよ」
「ほんとに? 嬉しい!」
「頑張って料理も作るから、食べに来てね」
「千鶴ちゃんのご飯、本当に美味しいのよね……そうだ、おすすめのケーキでも買って行くね」
「ありがとう! あ、でも、歳三さんはケーキ食べないかも」
「そうなの? うーん、でも、やっぱり二人の邪魔をするのも悪いし……土方さんの居ないときに伺おうかしら」
お千ちゃんが難しい顔で考え込む。
来客がお千ちゃんなら、歳三さんが不在のときでも招くのを許してくれそうだ。
しかし、ずっと応援してくれた彼女だからこそ、歳三さんと二人そろって出迎えたい。
「あ……そういえば、数日前は斎藤さんと沖田さんが来たの。一緒に夕食を食べたりして。だから気にしなくて大丈夫だよ」
「あの二人が?」
「うん。何だかよく分からないけど、私がいる気がしたって言って、来てくれてね」
「それって、邪魔をしに来たの間違いじゃなくて?」
「え? そんなこと無いと思うけど……」
「ほんと新選組の人たちって、今でも仲良しなのね」
呆れ顔のお千ちゃんが、カフェオレのストローを加える。
「でも、そういうことなら私もお邪魔させてもらおうかな」
「うん! 歳三さんに聞いたらすぐに連絡するね」
手を取り合って笑い合う。
何を作ろうかとか、頑張って掃除しなきゃとか、まだ決まってもいないのに、楽しみでそわそわしてしまう。
「斎藤さんと沖田さんといえば、今夜だったよね? 皆さんと会うの」
「……うん。これから家に帰って、歳三さんが迎えに来てくれるの」
「そう、楽しみだね」
お千ちゃんが目を細めて微笑む。まるで自分のことのように思ってくれているのが分かって嬉しくなったが、少し緊張してきた。
そう。今夜なのだ。
新選組のみんなと再会する場を、歳三さんが用意してくれた。
斎藤さんと沖田さんには先に会ったので、新選組の皆さんと再会する緊張に対しては、すこし免疫ができたかもしれない。
でも、緊張するものはするのだ。
だって、本当に会えるなんて。つい先日までは願うことしかできなかったのに。
(どうしよう……皆さんを目の前にしたら、何を言って良いかも分からないかも)
考えるほどに緊張してくる。
「ち、千鶴ちゃん?」
どんどん固くなっていく私を、お千ちゃんがどうにかしようと奮闘しているときだった。
ばたばたと、女子大学らしからぬ足音が近づいてくる。
目を向ければ、仲の良い友人がふたり。何やら必死の表情で、こちら目がけて突進してくる。
「千鶴!」
「お、落ち着いて? どうしたの?」
「あのね、千鶴にお客さんが来ててね」
「門のところに、とんでもなく美形な男の人たちが――! ああ、美形っていうかね、一人は色男で、もう一人は元気系好青年って感じで、あと一人は体育会系お兄さん……! とと、とにかくね」
「「三人ともイケメンなの!!」」
声を揃えてまくし立てられる。
そこの窓から見えるでしょと言われ、目に飛び込んできたのは。
「あれって……」
先に声をあげたのはお千ちゃんだった。
確認せずとも、見間違えようもない。
こちらに気付いたらしい赤髪の一人が、嬉しそうに手を振っている。
「『千鶴』って子を知らないかって、知ってたら呼んで来てって言われて……!」
「――わたし、行ってくるね!」
居ても立っても居られなくて、バッグを掴んで立ち上がる。
「いってらっしゃい、千鶴ちゃん」
「いってきます!」
いろいろと質問が飛んできたけれど、お千ちゃんが引き止めているのが振り向き様に見えた。
後でお礼をしないと。
まずは、はやく三人のところにたどり着こう。
どくどくと高鳴る心臓を抑えながら、一階へ繋がる階段を駆け降りた。
<続>
仲間と再会編6話目。過去作品はこちらからどうぞ→<作品リスト>
2014/7/27設定を残して書き直し
空色のつづき(6)
「土方さんに会えて、本当に良かったね。千鶴ちゃん」
「ありがとう、お千ちゃん。たくさん心配かけてごめんね」
大学の食堂兼カフェで、対面に座るお千ちゃんはすこし涙を浮かべている。
中学のとき再会した彼女には、ずっと心配をかけてきた。前世の記憶を分かち合える唯一の親友。
かつての鬼の姫は、今世でも気品が溢れ美しく、加えて明るく聡明だ。
彼女が一緒に居てくれただけで救われた。
歳三さんを見つけられずに何度も挫けそうになった私を、数えきれないほど励ましてくれた。
自分から行動を起こさなければ、実家を出ようとも思わなかったし、あのマンションで歳三さんに出会うこともなかっただろう。
再会できたと電話で報告したとき、心から喜んでくれたお千ちゃん。
その優しい声に、思わず涙を零したのは記憶に新しい。
「ずっと励ましてくれたお千ちゃんのおかげだよ。本当にありがとう」
「やだ、なに言ってるの。健気に土方さんのこと想い続けた、千鶴ちゃんの気持ちが届いたのよ」
「そ、それは言い過ぎじゃないかな? でもね、私が伝えておきたいの。ありがとう」
「……はあ。そんな笑顔で、そんなこと言われたら反論できないなあ」
困ったように笑って、お千ちゃんが椅子の背もたれに身体を預ける。
春らしい、パステルグリーンのネイルをまっとた手でカフェオレのグラスを取ると、氷がカラカラと音をたてる。
つられて自分のアイスティーを口にした。
綺麗なネイルだねと感想を伝えると、ありがとうと笑い、おすすめのネイルサロンを教えてくれる。
二階のカフェから見える大学の正門には、これから遅めの講義だったり、帰宅したりする学生でにぎわっている。
夕方なので、どちらかといえば帰宅するほうが多い。
千鶴たち一年生は、昨日が入学式だった。そして今日は午後のガイダンスだけ。
クラスの顔合わせといっても、大学の付属だった女子高からの生徒がほとんどで、ガイダンスが終われば仲の良い者同士で帰って行く。
千鶴とお千もその中のひとつだ。
もちろん他にも仲の良い友人たちはいるけれど、アルバイトやサークル見学があるらしい。また来週と言い合い、手を振って別れた。
由緒ある大学らしいが、校舎は建て替わったばかりだという。
お洒落な食堂兼カフェは、いかにも女子大生が好みそうだ。千鶴も例外ではなく、正門から見えることもあって気になっていた。
せっかくだからと言って、お千ちゃんと二人でお茶をしていた。
「真上の部屋が土方さんのお家だったんでしょ? じゃあ、お邪魔するのは難しそうね……千鶴ちゃんのお家に遊びに行くの、楽しみにしてたけど仕方ないかな」
「え……どうして?」
「千鶴ちゃん、土方さんの家で生活してるんでしょう?」
「あっ」
そうだった。
でも、どこか恥ずかしくて、まだお千ちゃんには話していないと思っていたのに。
「わたし、その話してたかな?」
「ううん。でも千鶴ちゃんの話を聞くかぎり、土方さんって独占欲強そうだし、やっと会えた恋人を一人で寝かせるほど心も広くなさそうだし」
「そ、そうかな」
「そうよ。絶対そう。でも、千鶴ちゃんを大切にしてことだけは分かるから、仕方なく邪魔はしないけどね」
とっても今さらだが、もう何年も千鶴の相談役だった彼女には、前世のことも含めていろいろと話してしまっている。
ごめんなさい、歳三さん。
「でも、お千ちゃんには今まで支えてもらったお礼もしたいし、遊びに来て欲しいな。歳三さんにお願いしてみるよ」
「ほんとに? 嬉しい!」
「頑張って料理も作るから、食べに来てね」
「千鶴ちゃんのご飯、本当に美味しいのよね……そうだ、おすすめのケーキでも買って行くね」
「ありがとう! あ、でも、歳三さんはケーキ食べないかも」
「そうなの? うーん、でも、やっぱり二人の邪魔をするのも悪いし……土方さんの居ないときに伺おうかしら」
お千ちゃんが難しい顔で考え込む。
来客がお千ちゃんなら、歳三さんが不在のときでも招くのを許してくれそうだ。
しかし、ずっと応援してくれた彼女だからこそ、歳三さんと二人そろって出迎えたい。
「あ……そういえば、数日前は斎藤さんと沖田さんが来たの。一緒に夕食を食べたりして。だから気にしなくて大丈夫だよ」
「あの二人が?」
「うん。何だかよく分からないけど、私がいる気がしたって言って、来てくれてね」
「それって、邪魔をしに来たの間違いじゃなくて?」
「え? そんなこと無いと思うけど……」
「ほんと新選組の人たちって、今でも仲良しなのね」
呆れ顔のお千ちゃんが、カフェオレのストローを加える。
「でも、そういうことなら私もお邪魔させてもらおうかな」
「うん! 歳三さんに聞いたらすぐに連絡するね」
手を取り合って笑い合う。
何を作ろうかとか、頑張って掃除しなきゃとか、まだ決まってもいないのに、楽しみでそわそわしてしまう。
「斎藤さんと沖田さんといえば、今夜だったよね? 皆さんと会うの」
「……うん。これから家に帰って、歳三さんが迎えに来てくれるの」
「そう、楽しみだね」
お千ちゃんが目を細めて微笑む。まるで自分のことのように思ってくれているのが分かって嬉しくなったが、少し緊張してきた。
そう。今夜なのだ。
新選組のみんなと再会する場を、歳三さんが用意してくれた。
斎藤さんと沖田さんには先に会ったので、新選組の皆さんと再会する緊張に対しては、すこし免疫ができたかもしれない。
でも、緊張するものはするのだ。
だって、本当に会えるなんて。つい先日までは願うことしかできなかったのに。
(どうしよう……皆さんを目の前にしたら、何を言って良いかも分からないかも)
考えるほどに緊張してくる。
「ち、千鶴ちゃん?」
どんどん固くなっていく私を、お千ちゃんがどうにかしようと奮闘しているときだった。
ばたばたと、女子大学らしからぬ足音が近づいてくる。
目を向ければ、仲の良い友人がふたり。何やら必死の表情で、こちら目がけて突進してくる。
「千鶴!」
「お、落ち着いて? どうしたの?」
「あのね、千鶴にお客さんが来ててね」
「門のところに、とんでもなく美形な男の人たちが――! ああ、美形っていうかね、一人は色男で、もう一人は元気系好青年って感じで、あと一人は体育会系お兄さん……! とと、とにかくね」
「「三人ともイケメンなの!!」」
声を揃えてまくし立てられる。
そこの窓から見えるでしょと言われ、目に飛び込んできたのは。
「あれって……」
先に声をあげたのはお千ちゃんだった。
確認せずとも、見間違えようもない。
こちらに気付いたらしい赤髪の一人が、嬉しそうに手を振っている。
「『千鶴』って子を知らないかって、知ってたら呼んで来てって言われて……!」
「――わたし、行ってくるね!」
居ても立っても居られなくて、バッグを掴んで立ち上がる。
「いってらっしゃい、千鶴ちゃん」
「いってきます!」
いろいろと質問が飛んできたけれど、お千ちゃんが引き止めているのが振り向き様に見えた。
後でお礼をしないと。
まずは、はやく三人のところにたどり着こう。
どくどくと高鳴る心臓を抑えながら、一階へ繋がる階段を駆け降りた。
<続>
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