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土千転生シリーズです。
仲間と再会編3話目。過去作品はこちらからどうぞ→<作品リスト>
2014/5/31 設定を残して書き直し
空色のつづき(3)
前を行く歳三さんを追って階段を上って行く途中。
彼が突然足を止めた。うっかり背中にぶつかってしまう。
「ひゃっ!」
結局。
夕食は自分の家で作ったけれど、歳三さんはスーツのままだったり、仕上げの調味料や薬味は彼の家に運んでしまっていたりで、一旦戻ることになった。
もう、千鶴の家に残っている食器や調理器具も、ぜんぶ彼の家に置くことにしよう。
明日には運んでしまおうかな、なんてぼんやりと考えていた。
(いたた……)
ぶつかった鼻先がすこし痛い。
階段といっても6階から7階に上がるだけだ。そして出入口のすぐ横が歳三さんの家の玄関である。
立ち止まったりして、一体どうしたのか。
「……歳三さん?」
動かない背中の先に人の気配がするのだが、千鶴の気のせいなのか。
二人並ぶには狭い階段ではよく分からない。
「そうきたか……」
ようやくその身体が動いたと思ったら、盛大なため息とともに頭が無念そうに振られる。
そして廊下に響いたのは、よく知っていて、とても懐かしい声だった。
「土方さん、後ろにいる千鶴ちゃんみたいなのは何ですか?」
「……総司、みたいなのとは何だ」
声を聞いて、あと数段だった階段を駆け上がる。ほとんど勢いだった。
歳三さんが「あっこら」とか「勝手に出てくんな」とか言っているのは聞こえたけれど、今ばかりはお構いなしだ。
すり抜けようと思った隙間に身体を寄せられて、通せんぼのようなことをされる。
構わずぎゅっと横から身体を割り入れると、目の前に居たのはやはりあの二人だった。
「あ、久しぶり、千鶴ちゃん。……相変わらずだね君、その登場の仕方とか」
「久しいな、雪村。元気そうで何よりだ」
からかうような笑みと、慈しむような微笑を向けられる。間違いなく、沖田さんと斎藤さんだ。
二人とも現代のスーツに身を包んでいるけれど、まったく変わっていない。
その体で、わたしの目の前に立っている。
じわ、と熱いものが込み上げて来て、視界がどんどん滲んだ。
「お二人とも、お元気そうで……嬉しいです」
瞬きをすると涙が頬を伝う。
「……そういえば、君の泣き顔って始めて見るかも」
「――おい、総司」
涙が零れて視界がクリアになった瞬間、すぐ目の前に沖田さんの手があった。
止めようとする斎藤さんの手は届きそうにない。
「え?」
訳が分からず、反射的に目を瞑ったときだった。
「させると思ってんのか」
肩を抱かれて引き寄せられる。
ぽすんと背中にあたったのは歳三さんの胸。
「だから……会わせたくなかったんだよ」
「別に、ただの振りだったのに」
「おまえの冗談はいつも心臓に悪い」
恐る恐る目を開いたわたしを取り囲むのは、何やら憔悴した歳三さんに、にこにこと笑う沖田さん、呆れ顔の斎藤さん。
ちなみに、歳三さんは背後から抱きしめるのを止めてくれない。
二人の視線が居たたまれなくて困っていると、沖田さんがやれやれと首を振った。
「あの? いつまで千鶴ちゃんをそうしてつもりですか。それにここ廊下だし、早く家に入れて下さい」
「つまらないものですが、手土産を持参したので召し上がって下さい。雪村が好みそうなものにしてみました」
斎藤さんの手には、最近駅前にできたケーキ屋さんの紙袋。
言葉は明らかに歳三さんに向けられているのに、なぜか私の目の前に差し出される。
「あ、ありがとうございます……?」
「おまえら分かってて来やがったな? ――まあ良い、適当に上がれ」
頭上から重い溜息が聞こえる。
歳三さんがでたらめに投げた鍵を、沖田さんが余裕の表情で掴み取った。
「じゃあお言葉に甘えて」
「お邪魔致します」
二人が先に玄関に入ると、ようやく腕が離される。
ようやく目に入った歳三さんの顔はすっかり眉間に皺が寄っていたけれど、諦めたように薄く笑っている。
「そのうち会せようと思ってたんだ。仕方ねえ」
「……わたしが皆さんと会うの、嫌だったんですか?」
「馬鹿。ただの嫉妬だ」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
嬉しいのにすぐ言葉が出て来ない。二人きりではないのに、突然その言葉はずるい。
ほら行くぞ、と先を行った歳三さんの耳は赤くなっていた。
「早速二人で何やってるのかと思えば……それで、土方さんは何で赤くなってるんですか」
正面から歳三さんを見たらしい沖田さんが、楽しそうに口元を歪めた。
<続>
仲間と再会編3話目。過去作品はこちらからどうぞ→<作品リスト>
2014/5/31 設定を残して書き直し
空色のつづき(3)
前を行く歳三さんを追って階段を上って行く途中。
彼が突然足を止めた。うっかり背中にぶつかってしまう。
「ひゃっ!」
結局。
夕食は自分の家で作ったけれど、歳三さんはスーツのままだったり、仕上げの調味料や薬味は彼の家に運んでしまっていたりで、一旦戻ることになった。
もう、千鶴の家に残っている食器や調理器具も、ぜんぶ彼の家に置くことにしよう。
明日には運んでしまおうかな、なんてぼんやりと考えていた。
(いたた……)
ぶつかった鼻先がすこし痛い。
階段といっても6階から7階に上がるだけだ。そして出入口のすぐ横が歳三さんの家の玄関である。
立ち止まったりして、一体どうしたのか。
「……歳三さん?」
動かない背中の先に人の気配がするのだが、千鶴の気のせいなのか。
二人並ぶには狭い階段ではよく分からない。
「そうきたか……」
ようやくその身体が動いたと思ったら、盛大なため息とともに頭が無念そうに振られる。
そして廊下に響いたのは、よく知っていて、とても懐かしい声だった。
「土方さん、後ろにいる千鶴ちゃんみたいなのは何ですか?」
「……総司、みたいなのとは何だ」
声を聞いて、あと数段だった階段を駆け上がる。ほとんど勢いだった。
歳三さんが「あっこら」とか「勝手に出てくんな」とか言っているのは聞こえたけれど、今ばかりはお構いなしだ。
すり抜けようと思った隙間に身体を寄せられて、通せんぼのようなことをされる。
構わずぎゅっと横から身体を割り入れると、目の前に居たのはやはりあの二人だった。
「あ、久しぶり、千鶴ちゃん。……相変わらずだね君、その登場の仕方とか」
「久しいな、雪村。元気そうで何よりだ」
からかうような笑みと、慈しむような微笑を向けられる。間違いなく、沖田さんと斎藤さんだ。
二人とも現代のスーツに身を包んでいるけれど、まったく変わっていない。
その体で、わたしの目の前に立っている。
じわ、と熱いものが込み上げて来て、視界がどんどん滲んだ。
「お二人とも、お元気そうで……嬉しいです」
瞬きをすると涙が頬を伝う。
「……そういえば、君の泣き顔って始めて見るかも」
「――おい、総司」
涙が零れて視界がクリアになった瞬間、すぐ目の前に沖田さんの手があった。
止めようとする斎藤さんの手は届きそうにない。
「え?」
訳が分からず、反射的に目を瞑ったときだった。
「させると思ってんのか」
肩を抱かれて引き寄せられる。
ぽすんと背中にあたったのは歳三さんの胸。
「だから……会わせたくなかったんだよ」
「別に、ただの振りだったのに」
「おまえの冗談はいつも心臓に悪い」
恐る恐る目を開いたわたしを取り囲むのは、何やら憔悴した歳三さんに、にこにこと笑う沖田さん、呆れ顔の斎藤さん。
ちなみに、歳三さんは背後から抱きしめるのを止めてくれない。
二人の視線が居たたまれなくて困っていると、沖田さんがやれやれと首を振った。
「あの? いつまで千鶴ちゃんをそうしてつもりですか。それにここ廊下だし、早く家に入れて下さい」
「つまらないものですが、手土産を持参したので召し上がって下さい。雪村が好みそうなものにしてみました」
斎藤さんの手には、最近駅前にできたケーキ屋さんの紙袋。
言葉は明らかに歳三さんに向けられているのに、なぜか私の目の前に差し出される。
「あ、ありがとうございます……?」
「おまえら分かってて来やがったな? ――まあ良い、適当に上がれ」
頭上から重い溜息が聞こえる。
歳三さんがでたらめに投げた鍵を、沖田さんが余裕の表情で掴み取った。
「じゃあお言葉に甘えて」
「お邪魔致します」
二人が先に玄関に入ると、ようやく腕が離される。
ようやく目に入った歳三さんの顔はすっかり眉間に皺が寄っていたけれど、諦めたように薄く笑っている。
「そのうち会せようと思ってたんだ。仕方ねえ」
「……わたしが皆さんと会うの、嫌だったんですか?」
「馬鹿。ただの嫉妬だ」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
嬉しいのにすぐ言葉が出て来ない。二人きりではないのに、突然その言葉はずるい。
ほら行くぞ、と先を行った歳三さんの耳は赤くなっていた。
「早速二人で何やってるのかと思えば……それで、土方さんは何で赤くなってるんですか」
正面から歳三さんを見たらしい沖田さんが、楽しそうに口元を歪めた。
<続>
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