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二人と二匹で、同居はじめました。(2)
「ちづ、危ないからちょこまかすんな」
「み?」
小さい体でちょこまかと走りまわっていたちづを捕まえて、両手で抱き上げる。
順調に成長しているが、まだまだ子猫だ。じたばたしたところで、両手にすっぽりと収まった小さな体と短い手足では全く効果がない。
「大人しくしてないと、リビングに閉じ込めるぞ」
「ぅにゃ……」
人間の言葉なんて理解していないだろうが、遊んでもらえるどころか凄まれて、しょんぼりとしっぽを下げる。
「俺が悪いみたいじゃねえか……」
そう。明日、ついに千鶴と黒猫が引っ越してくる。
そのために物置にしていた空き部屋を片付けているのだ。と言っても、置いていたのはダンボール程度で、中身を出して他の部屋にしまえばすぐ終わる。
「これで、変に部屋を持て余すこともなくなるか」
千鶴に言った『一人と一匹では広すぎる』というのも、あながち嘘ではない。自分が寝室と書斎で使っても、まだ一部屋余っているのだから。
職場である動物病院に通える距離で、かつ駐車場があるマンションを探したらここしかなかった。おかげで、総司はうちの病院に寄ったついでといって突然押しかけて来るし、最近では斎藤すらよく訪ねて来る。もっとも、斎藤はちづに会いたいだけなのだが。
しかし、一部屋多かったり、千鶴が大学に通える距離だったりしたのは幸運だった。今さらながら、当時の自分は良いマンションを選んだもんだと自賛してみる。
「明日から、一人と一匹増えるからな。びっくりすんなよ?」
親指でちづの額をちょいちょいと撫でれば、楽しそうにそうにみゃあみゃあと鳴く。
しかし、何と言えばいいのか、ちづに関しては大丈夫だろう。悲しいことに警戒心というものがこれっぽっちもないのだ。
こいつを道端で拾ったあの夜、何にも襲われず生きていたのがまったく不思議である。
問題は、人間の千鶴のほう。見るからに恋愛ごとに慣れていないのに、突然男との同居が決まって動揺を隠せていない。
「まあ、俺のせいだよなあ」
俺が、はっきり付き合おうだとか好きだとか伝えるのを端折ったのが悪い。同居が始まるという事実だけが先走りして、すっかりタイミングを失ってしまった。
無論、鈍感な千鶴は土方の気持ちを読むスキルなど持ち合わせていない。
「――…こんなの、初めてだから仕方ねえだろ」
今までの自分なら、女と同居なんて頼まれても御免だったのに、彼女に抱いた感情は過去とまったく逆のもので。
気付いたら口に出ていたのだ。同居しよう、と。
いま思い出せば、突然の同居を提案したときの自分はみっともないくらい必死だった。総司あたりが見ていれば、さぞかし面白がられただろう。
最初から、千鶴の分かりやすい好意なんてとっくに気付いていた。俺も好ましいと思っていただけに悪い気はしていなかったが、年上に憧れを抱くなんてよくある話だ。
だから、いろんな事に見て見ぬふりをしていた。
「はず、だったんだけどな」
「にゃ?」
ふたを開ければこんな状況で、動揺する千鶴に気付きながら、断る隙を与えないように動く自分がいる。
ちなみに、今のところ同棲ではなく同居という名目なので、俺と千鶴の個室には鍵を設置した。鍵なんて必要のない関係になることが、目標であり必須事項である。
だから、早く気持ちを伝えなければいけない。初心な千鶴には悪いが、こちらはいつまでも中途半端な関係でいる気などないのだ。
しかし、こんなに彼女に執着しているくせに、言い出せないまま今に至るのは何故だろうか。もしかして自分は、千鶴に拒否されるという事態を怖がっているのか。
「らしくねえよな」
「みっ! みぃっ!」
「……分かったよ」
ぼんやりするなら遊んでくれと、ちづが再びじたばたと動き出した。
小さな頭を撫でると嬉しそうに鳴く。やわらかい長毛はくしゃくしゃになったが、満足そうなので問題ない。
そんなことをしていたら、すっかり気が抜けてしまった。
思いのほか、千鶴との同居に緊張しているらしい自分に苦笑して、ちづと遊ぶことに集中する。
部屋の片付けは、予定より時間がかかりそうだ。
<続>
二人と二匹で、同居はじめました。(2)
「ちづ、危ないからちょこまかすんな」
「み?」
小さい体でちょこまかと走りまわっていたちづを捕まえて、両手で抱き上げる。
順調に成長しているが、まだまだ子猫だ。じたばたしたところで、両手にすっぽりと収まった小さな体と短い手足では全く効果がない。
「大人しくしてないと、リビングに閉じ込めるぞ」
「ぅにゃ……」
人間の言葉なんて理解していないだろうが、遊んでもらえるどころか凄まれて、しょんぼりとしっぽを下げる。
「俺が悪いみたいじゃねえか……」
そう。明日、ついに千鶴と黒猫が引っ越してくる。
そのために物置にしていた空き部屋を片付けているのだ。と言っても、置いていたのはダンボール程度で、中身を出して他の部屋にしまえばすぐ終わる。
「これで、変に部屋を持て余すこともなくなるか」
千鶴に言った『一人と一匹では広すぎる』というのも、あながち嘘ではない。自分が寝室と書斎で使っても、まだ一部屋余っているのだから。
職場である動物病院に通える距離で、かつ駐車場があるマンションを探したらここしかなかった。おかげで、総司はうちの病院に寄ったついでといって突然押しかけて来るし、最近では斎藤すらよく訪ねて来る。もっとも、斎藤はちづに会いたいだけなのだが。
しかし、一部屋多かったり、千鶴が大学に通える距離だったりしたのは幸運だった。今さらながら、当時の自分は良いマンションを選んだもんだと自賛してみる。
「明日から、一人と一匹増えるからな。びっくりすんなよ?」
親指でちづの額をちょいちょいと撫でれば、楽しそうにそうにみゃあみゃあと鳴く。
しかし、何と言えばいいのか、ちづに関しては大丈夫だろう。悲しいことに警戒心というものがこれっぽっちもないのだ。
こいつを道端で拾ったあの夜、何にも襲われず生きていたのがまったく不思議である。
問題は、人間の千鶴のほう。見るからに恋愛ごとに慣れていないのに、突然男との同居が決まって動揺を隠せていない。
「まあ、俺のせいだよなあ」
俺が、はっきり付き合おうだとか好きだとか伝えるのを端折ったのが悪い。同居が始まるという事実だけが先走りして、すっかりタイミングを失ってしまった。
無論、鈍感な千鶴は土方の気持ちを読むスキルなど持ち合わせていない。
「――…こんなの、初めてだから仕方ねえだろ」
今までの自分なら、女と同居なんて頼まれても御免だったのに、彼女に抱いた感情は過去とまったく逆のもので。
気付いたら口に出ていたのだ。同居しよう、と。
いま思い出せば、突然の同居を提案したときの自分はみっともないくらい必死だった。総司あたりが見ていれば、さぞかし面白がられただろう。
最初から、千鶴の分かりやすい好意なんてとっくに気付いていた。俺も好ましいと思っていただけに悪い気はしていなかったが、年上に憧れを抱くなんてよくある話だ。
だから、いろんな事に見て見ぬふりをしていた。
「はず、だったんだけどな」
「にゃ?」
ふたを開ければこんな状況で、動揺する千鶴に気付きながら、断る隙を与えないように動く自分がいる。
ちなみに、今のところ同棲ではなく同居という名目なので、俺と千鶴の個室には鍵を設置した。鍵なんて必要のない関係になることが、目標であり必須事項である。
だから、早く気持ちを伝えなければいけない。初心な千鶴には悪いが、こちらはいつまでも中途半端な関係でいる気などないのだ。
しかし、こんなに彼女に執着しているくせに、言い出せないまま今に至るのは何故だろうか。もしかして自分は、千鶴に拒否されるという事態を怖がっているのか。
「らしくねえよな」
「みっ! みぃっ!」
「……分かったよ」
ぼんやりするなら遊んでくれと、ちづが再びじたばたと動き出した。
小さな頭を撫でると嬉しそうに鳴く。やわらかい長毛はくしゃくしゃになったが、満足そうなので問題ない。
そんなことをしていたら、すっかり気が抜けてしまった。
思いのほか、千鶴との同居に緊張しているらしい自分に苦笑して、ちづと遊ぶことに集中する。
部屋の片付けは、予定より時間がかかりそうだ。
<続>
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