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オフ本再録です。
お手に取っていただいた方々、ありがとうございました。
猫パロシリーズ「2人と2匹になるまで。」と「お邪魔してきました」の間のお話です。
過去作品はリストからどうぞ→<作品リスト>
「あ、あああの」
「なんだよ」
「一緒に暮らすって、さっきは勢いで言っちゃいましたけど……」
「だから、そのままの意味だろ。このマンションだって一人と一匹で暮らすには広すぎるし、千鶴が違うとこにしたいってなら新しく探す」
「そ、そういうことじゃ」
「いまさら、嫌だなんて言うなよ?」
「にゃ……」
「ほら、ちづが悲しそうだぞ」
「ううっ……ずるいです」
「何にしてもキャンセルなんて効かねえ。あきらめろ」
「――…嫌というか、私にとって都合が良すぎるから、混乱するというか」
「何だ? もっと大きな声で言え」
「きゃ! 土方先生!?」
「みいっ!」
「いって……!」
「と、としぞー、先生ひっかいちゃダメ……!」
「にゃあっ」
「俺たちは遊んでるんじゃねえから。じゃれつくな、ちづ」
「ひ、土方先生は、私のことを離してくださいい」
二人と二匹で、同居はじめました。(1)
「としぞー、この家とはもうお別れだよ」
「み?」
「としぞーがここで暮らしたのは、少しだけだったね」
荷造りをする私が不思議なのか、としぞーが周りをうろうろとして落ち着かない。
結局、あれよあれよという間に土方先生との同居が決まった。
一番気掛かりだったのは父の反応だったが、完璧な挨拶をした土方先生を気に入ったらしく、気が抜けるほど丸く収まってしまった。
何より、土方先生が独立前に働いていたらしい動物病院の院長である近藤先生という方が、父の知り合いだったことが大きかった。むしろ、自分は地方に出張中だから、土方先生と一緒なら安心だと喜ばれてしまう始末。
気付いてみれば、大学に入学してから暮らし続けたこの部屋の引き渡しは明日だ。
つまり。
明日から、土方先生と一緒に暮らす。
「……ううっ」
「み?」
「なっ何でもないよ? 早く荷造りしなきゃね!」
きっと今、としぞーから見た私の顔は真っ赤だ。こんな調子では、明日から先生と一緒に暮らしていけない。
もっとも、どうして先生が一緒に暮らそうと言ってくれたのか、今のところはっきりしていない。不安はたくさんあるけれど、自分から聞く勇気なんて当然ないし、そんなことを聞いて同居の話が消えてしまったら、先生とほとんど会えなくなる。それだけは嫌だった。
同居を最初に提案したのは先生だ。準備も積極的に進めてくれているし、嫌な顔ひとつせず父に挨拶もしてくれた。
だから、自分を好きになってくれた可能性をかけらも考えなかった訳ではない。でも、先生が自分のような子供を好きになる理由がこれっぽっちも思いつかない。
(頭をなでられたり、膝に乗せられたりはするけど)
子供相手と思っているから平気なのかもしれないし、そうでなくても、それだけで恋人になれたと思って良いのだろうか。
しかし、たとえば恋人と一緒に暮らすということは。
(……だめだ。だめだめ! 考えちゃ駄目!)
突然ばくばくと鳴りはじめた心臓の音をかき消すように頭を振る。
「にゃ!」
「な、なな何でもないよ!」
心配そうに膝に乗ってきたとしぞーにありがとうと伝えて、自分で乱した髪を整える。熱が上がった顔は、しばらく戻りそうにない。
「こんなことじゃ、ダメだよね」
何にもできない子供だと思われたくない。――いや、今はただの子供と思われていても、好きになってもらう努力をしたい。
としぞーを撫でる手に思わず力が入りそうになって、あわてて手を離した。
「みー?」
いったい今日はどうしたんだという顔で、鼻先をぐりぐりと擦りつけてくる。としぞーなりに励ましてくれているのだろうか。
「ありがとう。頑張らなきゃね!」
「にゃっ!」
数分後、気合いが入りすぎてお皿を数枚割ってしまったことは秘密だ。
<続>
お手に取っていただいた方々、ありがとうございました。
猫パロシリーズ「2人と2匹になるまで。」と「お邪魔してきました」の間のお話です。
過去作品はリストからどうぞ→<作品リスト>
「あ、あああの」
「なんだよ」
「一緒に暮らすって、さっきは勢いで言っちゃいましたけど……」
「だから、そのままの意味だろ。このマンションだって一人と一匹で暮らすには広すぎるし、千鶴が違うとこにしたいってなら新しく探す」
「そ、そういうことじゃ」
「いまさら、嫌だなんて言うなよ?」
「にゃ……」
「ほら、ちづが悲しそうだぞ」
「ううっ……ずるいです」
「何にしてもキャンセルなんて効かねえ。あきらめろ」
「――…嫌というか、私にとって都合が良すぎるから、混乱するというか」
「何だ? もっと大きな声で言え」
「きゃ! 土方先生!?」
「みいっ!」
「いって……!」
「と、としぞー、先生ひっかいちゃダメ……!」
「にゃあっ」
「俺たちは遊んでるんじゃねえから。じゃれつくな、ちづ」
「ひ、土方先生は、私のことを離してくださいい」
二人と二匹で、同居はじめました。(1)
「としぞー、この家とはもうお別れだよ」
「み?」
「としぞーがここで暮らしたのは、少しだけだったね」
荷造りをする私が不思議なのか、としぞーが周りをうろうろとして落ち着かない。
結局、あれよあれよという間に土方先生との同居が決まった。
一番気掛かりだったのは父の反応だったが、完璧な挨拶をした土方先生を気に入ったらしく、気が抜けるほど丸く収まってしまった。
何より、土方先生が独立前に働いていたらしい動物病院の院長である近藤先生という方が、父の知り合いだったことが大きかった。むしろ、自分は地方に出張中だから、土方先生と一緒なら安心だと喜ばれてしまう始末。
気付いてみれば、大学に入学してから暮らし続けたこの部屋の引き渡しは明日だ。
つまり。
明日から、土方先生と一緒に暮らす。
「……ううっ」
「み?」
「なっ何でもないよ? 早く荷造りしなきゃね!」
きっと今、としぞーから見た私の顔は真っ赤だ。こんな調子では、明日から先生と一緒に暮らしていけない。
もっとも、どうして先生が一緒に暮らそうと言ってくれたのか、今のところはっきりしていない。不安はたくさんあるけれど、自分から聞く勇気なんて当然ないし、そんなことを聞いて同居の話が消えてしまったら、先生とほとんど会えなくなる。それだけは嫌だった。
同居を最初に提案したのは先生だ。準備も積極的に進めてくれているし、嫌な顔ひとつせず父に挨拶もしてくれた。
だから、自分を好きになってくれた可能性をかけらも考えなかった訳ではない。でも、先生が自分のような子供を好きになる理由がこれっぽっちも思いつかない。
(頭をなでられたり、膝に乗せられたりはするけど)
子供相手と思っているから平気なのかもしれないし、そうでなくても、それだけで恋人になれたと思って良いのだろうか。
しかし、たとえば恋人と一緒に暮らすということは。
(……だめだ。だめだめ! 考えちゃ駄目!)
突然ばくばくと鳴りはじめた心臓の音をかき消すように頭を振る。
「にゃ!」
「な、なな何でもないよ!」
心配そうに膝に乗ってきたとしぞーにありがとうと伝えて、自分で乱した髪を整える。熱が上がった顔は、しばらく戻りそうにない。
「こんなことじゃ、ダメだよね」
何にもできない子供だと思われたくない。――いや、今はただの子供と思われていても、好きになってもらう努力をしたい。
としぞーを撫でる手に思わず力が入りそうになって、あわてて手を離した。
「みー?」
いったい今日はどうしたんだという顔で、鼻先をぐりぐりと擦りつけてくる。としぞーなりに励ましてくれているのだろうか。
「ありがとう。頑張らなきゃね!」
「にゃっ!」
数分後、気合いが入りすぎてお皿を数枚割ってしまったことは秘密だ。
<続>
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