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千鶴ちゃんが猫を拾うパロ。
シリーズ化を予定しています。

作者が猫を飼った経験がないので、不自然な表現があるかもしれません。

作品は以下からどうぞ♪

拍手[26回]







アパートの階段を急いで駆け上がる。
閉じた傘から水滴がぽたぽたと落ちるのも、気にしていられなかった。
早く、早くこの子を助けてあげなくちゃ。





としぞー拾いました。





「にゃぁー…」
「…良かった」

よろよろと立ちながらも、小さい鳴き声を発した黒い子猫。
緊張していた胸をほっと撫で下ろした。

夕方で雨の帰り道、道路脇の草むらで小さな毛布を引っ掻けながらふらふら歩いている子猫を見つけて、どうしても放っておけなかった。
毛布ごとそっと抱き上げると、人肌に安心したのかすぐ気を失ってしまう。
本当は何か箱に入れられていたのだろうか…しかし、もうどこで捨てられたのかも分からない。
とりあえず連れ帰り、お湯に浸けたりして懸命に温めてみると、何とか目を覚ましてくれた。

「雨にまで打たれたのに、きみは丈夫だね」
「…にゃ…」
「ふふっ」

額を指で優しく撫でてみると、気持ち良さそうに目をつぶる。
急いで近くの店で買ってきた子猫用のミルクも、すぐ飲んでくれて安心した。
まだ手のひらに乗る位の小さい子猫だが、お湯に入れて乾かしてみたら、とても綺麗な猫で驚いた。
艶のある黒い短毛に、紫で切れ長な大きめの瞳。

「…美人さんだね」

――もちろん…今は可愛くて仕方ないけど。

眠たそうに欠伸をしている子猫を、新しい毛布に包んで大切に腕の中で温める。
ふと、拾ったときこの子が引っ掻けていた毛布が目の端に入った。

「…うーん?……『と、しぞ、ー』?」

雨で滲んでしまっているが、子供が書いた様な文字が確認できる。
もしかして、この子の名前だろうか。

「…としぞー?」
「にゃ?」

この子に話しかけたって分からないだろうなと思いつつ、考えなしにその名前を呼んでみると、意外な事に反応した。

「…としぞーで良いの?」
「にゃーぁっ」

――とりあえず私の声に反応しているだけかもしれないけど…

もう家に連れてきた時、自分で飼うと覚悟を決めた。
しかも運が良い事に、このアパートはペットを飼える。
『としぞー』という名前に返事もしてくれるし、これで決まりでいいかな。

「ふふ、よろしくね。としぞー」
「ふにゃっ」

お腹を撫でればごろんと引っくり返ってくれる。

――ああもう…可愛い…

気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らすとしぞーを幸せな気分で見つめながら、明日は病院に連れて行かなければと考える。
確か歩いて10分位の所に動物病院があったはず。
明日、朝一番に行こう。
そう思いながら、としぞーを寝かせるためのカゴとクッションを用意して、自分も眠る事にした。




◇◇◇◇




次の日の朝、動物病院の待合室で、すやすやと眠るとしぞーが入ったカゴを抱えいた。
清潔な白い壁にかかった時計をぼんやりと見つめながら、診察室に呼ばれるのを待つ。
朝一番で来たつもりだったが、ペットを連れた飼い主さんが既にたくさん待っていた。
猫用の移動バッグなんて持っていなかったから、カゴにタオルを敷いて連れてきたのだが、他の動物が居るというのにとしぞーは驚く程大人しい。

――頭が良い子なんだね…きっと

もうすでに親バカになりかけているが、可愛いのだから仕方ない。
そんな幸せな気持ちでとしぞーを眺めていると、診察室からやっと声がかかった。

『どうぞ、お入り下さい』
「はいっ」

カゴを大きく揺らさない様ゆっくり立ち上がって診察室に入る。

「こんにちは、そちらにお掛け下さい」

そう言って椅子に座りながらこちらを向いたのは、ひどく綺麗な顔をした獣医さんだった。
艶のある黒髪に、紫で切れ長な瞳。

――あれ、この先生…

「…俺の顔になんか付いてるか?」
「あ…すいませんっ!」

思わず顔を凝視してしまっていた。
いくら綺麗な人だからといえ、初対面の方に対して失礼ではないか。

「まあいい…俺は土方って言う。とりあえず、そいつ見せろ」
「は、はいっ」

としぞーの入ったカゴを先生に渡す。
目を覚ましたとしぞーが、大きな瞳を開けて土方先生を見上げた。

「昨日…道端で拾ったんです」
「そうか…それにしては元気そうだな…っつ!」
「フ―――ッッ!!」

先生がとしぞーに触ろうとした瞬間、小さな爪が襲いかかった。

「ど、どうしたの?」
「大分やんちゃだな…おら、大人しくしろ」
「にゃあ―――っ!」

先生が慣れた手つきで、嫌がるとしぞーの体をひょいと持ち上げて診察していく。
さっきまであんなに大人しかったのに、一体どうしたのだろう。

診察が一通り終わると、興奮状態のまま、としぞーはカゴに戻された。
ひどく機嫌が悪いらしく、丸くなって不貞寝を始めてしまう。
尻尾はペシンペシンと不機嫌そうにカゴに敷かれたタオルを叩いている。
土方先生は苦笑いだ。

「こいつ、お前にはちゃんと懐いてんのか?」
「こんなに暴れたりするのは初めてです…」
「…俺のどこがそんなに気に入らないんだろうなあ」
「…すいませんでした」
「お前が謝る事じゃねえだろ。それより、体重が少し足りない位で、とりあえず健康だったぞ」
「本当ですか!良かった…」

未だ丸くなっているとしぞーの頭を指でちょんちょんとつついてみると、少し顔を上げてくれた。

「体、大丈夫だって。良かったね…としぞー」
「んにゃー」
「………」

土方先生が何故かこちらを凝視する。
眉間に皺も寄っているし…どうかしたのだろうか。

「…どうかされましたか?」
「…いや、何でもない」
「?」
「ところで、こいつ飼うのか?」
「はい」
「…そうか。責任持って育てろよ」
「精一杯としぞーの為に頑張ります!」
「………」
「…あの?」

また先生が難しい顔をする。
私は猫を飼うのは初めてだし、何か不安要素でもあるのだろうか。

「…もしかして、私、何かしてしまいましたか?」
「いや、何でもねえ。悪い」
「…そうですか」

まだ浮かない顔をしているのが気になるが、今日会ったばかりの人にずかずかと質問することもできない。

「じゃあ、また3日後診察に来るように」
「はいっ、今日はありがとうございました!」

先生の態度に少しもやもやしたものを残しながら、丁寧にお辞儀をして診察室を後にした。
またすやすやと寝始めたとしぞーを見つめながら、薬が処方されるのをぼんやりと待つ。

――それにしても、綺麗な先生だったな…

心なしか、としぞーと似ているなんて思ってしまったのは失礼だろうか。
何故としぞーの機嫌が悪かったのかも、先生の不思議な態度だったのかも分からないままだが、これからお世話になるのだし迷惑はかけない様にしないと。

「こんなに大人しいのにな…次は良い子にしてね…?」

としぞーをまた少しつついてみたが、今度は耳をぴくぴくとさせただけで、気持ちよさそうに眠り続けた。







その日の夜、土方先生が子猫の『ちづ』を拾います|ω・^)
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